【衝撃判決か】中古Windows/Officeは違法に?Microsoftが「再販不可」を主張し、格安キー市場に激震
安価なWindowsやOfficeのプロダクトキーが手に入る「中古ライセンス市場」。これまでグレーゾーンとされてきたこの市場に対し、ソフトウェアの巨人Microsoftが、ついに「再販は違法である」という”禁断の主張”を展開し、英国の競争審判所で真っ向から争っています。この訴訟の行方は、自作PCユーザーからリファービッシュ事業者、さらにはIT業界全体に甚大な影響を及ぼす可能性を秘めています。
Microsoftの”禁断の主張”とは?「非プログラム部分」が争点に
今回の訴訟でMicrosoftが展開している主張は、極めて異例かつ画期的なものです。彼らは、ソフトウェアのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)、アイコン、フォントといった「非プログラム著作物」には著作権の消尽(最初の販売で権利が尽き、再販が自由になる原則)が及ばないため、これらを含む中古ソフトウェアの再販は違法であると主張しています。
もしこの主張が認められれば、欧州で長年合法とされてきた中古ライセンス市場の根幹が揺らぐことになります。これは、「中古車は売買できるが、ハンドルや内装のデザインは別権利だから外して使え」と言われるような、常識では考えられないねじれが生じることを意味します。
中古ライセンス業者の反論「独占禁止法違反だ!」
これに対し、中古ライセンス流通を担ってきたVALUライセンシングは猛反発しています。彼らは、欧州ではソフトウェアの最初の販売で著作権が消尽し、中古転売が認められてきた判例(ソフトウェア指令)があることを反論の根拠としています。
さらに、Microsoftがサブスクリプション移行の割引を餌に、旧永続ライセンスを手放す条件を顧客契約に組み込み、中古供給源を意図的に細らせた行為が、独占禁止法に抵触し、競争を歪めていると主張。これにより、VALUライセンシングは2億7000万ポンド(約450億円)もの逸失利益が発生したと見積もっています。
広がる波紋:自作PCユーザーから大企業まで
この訴訟の行方は、IT業界全体に広範な影響を及ぼす可能性があります。安価なWindowsやOfficeの入手経路が狭まることで、自作PCユーザーや低予算でIT更新を行う現場、特にWindows 10の延命を考えているユーザーにとっては、ソフトウェアコストの負担が跳ね上がる懸念があります。
また、この問題は単一の訴訟に留まりません。英国では、OfficeやWindowsの購入者全員を代表する集団訴訟が提起されており、被害額は数十億ポンド規模に及ぶ可能性も指摘されています。さらに、AWSやGCPといったクラウドサービス上でのWindowsサーバー利用に関するライセンス費用設定を巡る訴訟や、競争当局によるクラウド市場調査も並行して進行しており、Microsoftのライセンス戦略全体が問われる事態となっています。
企業が今すぐできる「実務の備え」
判決が出るまでに、企業が取れる具体的な備えも動画で紹介されています。
- 保有する永続ライセンスの来歴と譲渡履歴を整理し、一元管理する。
- 中古ライセンスを調達する際は、出所や使用権の範囲、ダウングレード権、インストールメディアの適性などをベンダーに明示させる。
- サブスクリプション契約を精査し、旧ライセンスの放棄や保持条件が忍び込んでいないか確認する。
- Windows 10の延命が必要な現場では、公式のESU(拡張セキュリティ更新プログラム)の導入を検討する。
- 安価なキーの誘惑に流されず、Microsoft公式サイトなど公式の入手経路と検証可能なライセンスに限定する。
AIの所感
今回の訴訟は、デジタルコンテンツにおける「所有」と「利用」の境界線を巡る、現代社会の根源的な問いを投げかけています。Microsoftの主張が認められれば、ソフトウェアの二次流通市場は事実上消滅し、ユーザーは常にメーカーのコントロール下に置かれることになります。これは、消費者の選択の自由を奪い、独占を強化する動きとして、大きな議論を呼ぶでしょう。
一方で、ソフトウェアの不正コピーや海賊版対策という側面も無視できません。しかし、そのために合法的な中古市場まで閉ざすことが、果たして健全な競争環境を育むのか。この判決は、ソフトウェアの未来、そしてデジタルコンテンツの流通のあり方を大きく左右する、歴史的なものとなるでしょう。