【衝撃】「時間で動く新物質」Googleの量子チップwillowが発見。宇宙の常識を覆す驚異の実験成功
氷は0°で水になり、100°で水蒸気になります。これは温度という条件で物質の状態が変わる現象です。しかし、もし物質を時間のリズムで周期的に揺さぶったらどうなるでしょうか?2025年9月10日、科学誌ネイチャーに掲載された論文が物理学の常識を覆す発見を報告しました。Googleの量子プロセッサーを使った国際研究チームが、時間の周期によって生まれる全く新しい物質の状態「フロケ相秩序」を世界で初めて観測したのです。これは熱や圧力では決して作れない、時間だけが生み出す奇跡の物質相でした。
革命的発見の背景:非平衡系の物理学
ミュンヘン工科大学、プリンストン大学、GoogleクアンタムAIの国際共同研究チームが達成したこの成果は、物理学の教科書を書き換える可能性を秘めています。従来の物理学では、物質の相転移は温度や圧力などの静的な条件によって決まると考えられてきました。水が氷や水蒸気に変わるのも、磁石が特定の温度で磁力を失うのも、全て熱平衡状態での現象です。熱平衡状態とは、外部からエネルギーの出入りがなく安定した状態を指します。
しかし、自然界を見渡すと、生命活動、レーザー光、乱流など、常に変化し続ける非平衡系が数多く存在します。研究チームはこの非平衡状態において、平衡状態では決して現れない新しい物質の相が存在するのではないかという仮説を立てました。そして、フロケ理論という数学的枠組みを用いてこの仮説を検証することにしたのです。フロケ理論は、周期的な外力を受ける系の振る舞いを記述し、量子システムを特定のリズムで揺さぶることで、通常では考えられない安定した秩序状態が生まれることを予測していました。
Willow量子チップの威力:計算能力と量子エラー訂正
この画期的な実験を可能にしたのが、Googleが2024年12月9日に発表した最新の量子チップ「Willow」です。105個の超伝導量子ビットを搭載するこのチップは、世界有数のスーパーコンピューター「フロンティア」で10の25乗年かかる計算をわずか5分未満で実行する脅威的な性能を誇ります。10の25乗年という時間は、宇宙の年齢138億年の10の14乗倍以上という、人間の想像を完全に超えた時間スケールです。
しかし、Willowの真の価値は単純な計算速度にあるのではありません。量子プロセッサーは量子力学の法則そのものに従って動作するため、複雑な量子現象を数学的に計算するのではなく、物理現象として直接再現できるのです。これは、楽譜を読んで音楽を頭の中で想像するのと、実際に楽器を演奏して音を出すことの違いに似ています。Willowの最大の技術的ブレイクスルーは、量子エラー訂正における1以下の達成です。量子ビット数を増やすことでエラー率を指数関数的に減少させることに成功しました。3×3、5×5、7×7と量子ビットの配列を拡大するたびにエラー率がほぼ半減するという画期的な成果を達成したのです。
フロケ相秩序の実装とアニオンの時間的変身
研究チームはWillowの量子ビットをハニカム格子に配置し、フロケ相秩序モデルと呼ばれる理論モデルを実装しました。このモデルは、量子スピン液体モデルを時間周期的な駆動系に拡張したものです。各量子ビットは隣接するビットとX、Y、Zの3つの異なる方向で相互作用します。これらの相互作用を時間的に切り替えることで、系全体に周期的な揺さぶりを与えます。具体的には、まずX方向の相互作用を一定時間オンにし、次にY方向、そしてZ方向と順番に切り替えていきます。この3ステップで1周期となり、これを繰り返すことで系は周期的に駆動されます。
実装には超精密なマイクロパルスの制御が必要でした。各パルスのタイミングは数秒の精度で制御され、位相や振幅も厳密に調整されます。58個の量子ビット全てを同期させながらこの複雑な時間発展を実現することは、技術的に極めて困難な挑戦でした。研究チームはCフェーズゲートと単一量子ビット回転を組み合わせた量子回路を設計し、フロケ相秩序モデルを高い忠実度で実装することに成功しました。
実験で観測された最も驚くべき現象は、アニオンと呼ばれる準粒子の時間的な変身です。通常の3次元空間では素粒子はフェルミ粒子とボース粒子の2種類に分類されます。しかし2次元の世界では、この2つとは全く異なる統計性を持つ第3の粒子「アニオン」が存在可能です。フロケ相秩序モデルでは、Eアニオン(電気的性質を持つ)とMアニオン(磁気的性質を持つ)の2種類のアニオンが理論的に予測されていました。驚くべきことに、系を1周期駆動するとEアニオンがMアニオンに変身し、MアニオンがEアニオンに変身することが観測されました。そして2周期後には元の状態に戻ります。
キラルエッジモードの観測と量子もつれ
もう一つの重要な発見が、系の端に現れるキラルエッジモードです。ハニカム格子の淵に沿って、マヨラナフェルミオンと呼ばれる特殊な準粒子が1方向にのみ伝播する現象が観測されました。キラルとは「手」を意味し、右手と左手のように鏡像対称性が破れていることを示します。通常、粒子や情報は前進も後退も可能ですが、キラルエッジモードでは1方向への移動しか許されません。これは一方通行の高速道路のようなもので、散乱や反射が完全に禁止されています。この性質はトポロジカル保護と呼ばれる機構により実現されています。
なぜこの実験が古典コンピューターでは不可能だったのでしょうか?その答えは量子もつれという現象にあります。量子もつれは、複数の量子ビットが不可分に結びついた状態で、一方の測定が瞬時に他方に影響を与える現象です。フロケ相秩序状態では58個の量子ビットが高度にもつれ合った状態になります。この状態を古典的に記述するには、2の58乗個の複素数が必要です。これは約3×10の17乗という天文学的な数で、現在の全世界のコンピューターメモリを合わせても保存できません。量子プロセッサーはこの複雑な量子状態を自然に保持し、量子力学の法則に従って時間発展させることができます。古典コンピューターが地図を見て道順を計算するなら、量子プロセッサーは実際に道を歩くようなものです。
AIの所感
Googleの量子チップ「Willow」による「フロケ相秩序」の発見は、物理学の常識を覆し、時間と物質の根源的な理解を深める画期的な成果です。熱や圧力といった従来の物理的条件ではなく、「時間」という要素が物質の新たな状態を生み出すという事実は、私たちの宇宙観を大きく揺るがすものです。この実験は、量子もつれという現象を制御できる量子チップの圧倒的な威力を示しており、古典コンピューターでは決して到達できない領域へと科学を進歩させました。
この発見は、AIや新素材開発、さらには宇宙の謎の解明など、様々な分野に計り知れない応用をもたらす可能性を秘めています。量子プロセッサーという新しい目を得た人類は、これから何を見るのでしょうか。フロケ相秩序は、時間が作り出した結晶であり、空間ではなく時間の中に刻まれた秩序です。これは始まりに過ぎず、量子科学の夜明けを告げる第一歩となるでしょう。