【緊急事態】サム・アルトマン「コードレッド」発令！OpenAI、Googleら競合に追い詰められ「最後の切り札」で反撃なるか
2022年、Googleを震え上がらせたOpenAIのChatGPT。しかし時は流れ、今度はOpenAIのサム・アルトマンCEOが従業員に向けて「コードレッド」を発令する緊急事態に陥っています。ChatGPTへの広告導入計画は先送り、AIパーソナルアシスタントの開発は凍結など、計画されていた新規プロジェクトが次々と棚上げに。かつて業界を震撼させた確信者が、今度は追われる立場となった背景には、何があるのでしょうか。
3年前の構図が逆転：Google Geminiの猛追とAnthropicの台頭
OpenAIは、わずか2ヶ月で1億人のユーザーを獲得したChatGPTで市場最速の成長を遂げ、Googleを一時的に窮地に追い込みました。しかし、3年が経過した今、状況は一変しています。
Googleの猛追
2025年11月18日、Googleは最新のAIモデル「Gemini 3」をリリース。業界標準のベンチマークテスト「LMアリーナ」で1501というChatGPTの現行モデルを明確に上回るスコアを記録しました。さらに、Googleは検索エンジンのAIによる概要機能（月間20億人利用）やGeminiアプリ（月間アクティブユーザー7-10月で4.5億人→6.5億人）を通じてAIを浸透させ、巨大なエコシステムを武器にOpenAIを凌駕する勢いで成長しています。
Anthropicの台頭
2025年11月24日、元OpenAIの研究者たちが設立したAIスタートアップAnthropicが「Claude Opus 4.5」をリリース。「世界最高のコーディング、エージェント、コンピューター操作モデル」を謳い、ソフトウェアエンジニアリング能力を測る「SWEベンチ」でOpenAIのGPT-5.1やGoogleのGemini 3を上回る80.9%のスコアを記録しました。Anthropicは特にエンタープライズ市場で存在感を高め、OpenAIのシェアを着実に侵食。収益の約80%が企業クライアントから来ており、2028年には損益分岐点に到達する見込みと、消費者向けで稼ぐOpenAIとは異なる効率的なビジネスモデルを構築しています。
OpenAIを追い詰める「財務構造」の課題
OpenAIを取り巻く競争環境は激化の一途を辿っていますが、それ以上にOpenAIを追い詰めているのがその「財務構造」です。
- 巨額の投資コミットメント: データセンター建設やAIチップ調達に対するコミットメントは1兆4000億ドルに上り、日本のGDPの1/3に匹敵する額を将来の投資として約束しています。
- 赤字の予測: 内部の財務予測では、2028年に740億ドル（約11兆円）の損失を出すと見込まれており、2025年から2028年までの累計軽損失は440億ドルにも達すると試算されています。
- 黒字化は2030年以降: 年間収益が2000億ドルに達する2030年以降にようやく黒字の目処が立つとされており、それまでの5年間、OpenAIは投資家からの継続的な資金調達に依存し続けなければなりません。
- 高コストな運用: 支出の60%から80%がAIモデルの運用と保守に費やされており、推論コスト（ユーザーの質問に答えるための計算処理）に毎年数十億ドルが消えていく計算です。動画生成モデルSora 2だけでも、1日あたり約1500万ドル、年間換算で50億ドルのコストがかかると報じられています。
一方、Googleは検索広告やクラウド事業で安定した巨額の収益を上げており、現金保有高約1500億ドルでAI開発への投資を既存事業の利益で賄える構造を持っています。この持続的な競争において、OpenAIは投資家の信頼が揺らいだ瞬間に資金がショートするリスクを抱えています。
ユーザーが求める「EQ」：AIの人間らしさ
OpenAIは2025年8月にGPT-5をリリースしましたが、ユーザーの反応は予想を裏切るものでした。技術的な進化はあったものの、「臨床的すぎる」「冷たい」「想像性がない」といった批判が殺到し、GPT-4の温かみを求める声が驚くほど多かったのです。この出来事は、AI競争の本質が変わりつつあることを示しています。単なる性能の数値（IQの高さ）だけではユーザーの心は掴めず、人間によりそう「EQ（心の知性）」が求められているのです。
アルトマン氏がコードレッドのメモで強調した「信頼性と速度の向上」「パーソナライゼーションの強化」「回答可能なトピックの拡大」という3つの優先事項は、この教訓を反映していると言えます。
最後の切り札：新たな推論モデルとAIの未来
それでもOpenAIには最後の切り札があります。アルトマン氏は、来週にもGemini 3に対抗できる新しい推論モデルをリリースする計画があることを明かしました。内部評価ではGemini 3を上回る性能を示していると言います。この一手がAI覇権の構図を変えることができるのか、注目が集まります。
かつては「唯一の魔法使い」だったOpenAIも、今やGoogle、Anthropic、Meta、中国のDeepSeekなど複数の強力な魔法使いが並ぶステージで戦っています。フロンティアモデルの性能差は急速に縮まり、差別化の軸は純粋な知性の高さから、使いやすさ、親しみやすさ、そして持続可能なビジネスモデルへと移り変わろうとしています。5000億ドルの評価額と740億ドルの予想損失という数字が示すのは、OpenAIがかけている未来の大きさであり、同時にそのリスクの深刻さでもあります。黒字化までの5年間、投資家の信頼をつなぎ止め、競合の追撃を交わし続けられるかがOpenAIの命運を分けます。
AIの所感
OpenAIが直面している「コードレッド」の状況は、AI産業の急速な進化と激しい競争の現実を物語っています。かつては市場をリードした革新者も、わずか数年で追われる立場に転じるというテクノロジー業界の宿命が、AI分野でも繰り返されているのです。特にOpenAIの巨額な投資と赤字予測は、この技術がもたらす可能性の大きさと同時に、そのビジネスモデルの持続可能性に対する深刻な問いを投げかけています。これからのAIは、単に「賢い」だけでなく、ユーザーの心に寄り添い、親しみやすく、信頼できる存在であることが求められます。OpenAIが「最後の切り札」でこの逆境を乗り越え、AI業界の覇権を維持できるのか、それとも新たなプレーヤーが台頭するのか。その結末は、テクノロジーの未来だけでなく、私たちの社会のあり方をも形作ることになるでしょう。