【衝撃】Amazonで新品DDR5メモリを買ったら22年前のDDR2だった…巧妙すぎる返品詐欺の手口と自衛策を徹底解説
自作PCユーザーを震撼させる、巧妙かつ悪質な詐欺事件が報告された。Amazonで購入した最新規格の新品DDR5メモリ。しかし、その箱に入っていたのは、なんと約22年前に登場した旧規格「DDR2」メモリだったのだ。外箱の封印は破られておらず、一見しただけでは到底見抜けないこの詐欺は、なぜ成立してしまったのか。その驚くべき手口と背景、そして我々消費者が取るべき自衛策を徹底的に掘り下げる。
完璧な偽装:見た目、重さまで再現する手口
この事件は2025年12月16日、海外のテックメディア「VideoCardz」によって報じられた。ある読者がスペインのAmazonで「XPG Caster 32GB DDR5-6000 C40」というゲーミングメモリを4セット購入したところ、そのうちの1セットが偽物だったという。
犯行の手口は驚くほど巧妙だ。
- 完璧な封印: 箱は新品を示すプラスチックの封印フィルムで覆われており、開封された形跡は一切なかった。
- 精巧な偽装ラベル: 中に入っていた古いDDR2モジュールには、本物のDDR5のヒートシンク(放熱板)に似せた偽のシールが貼られていた。箱の小窓から覗いただけでは、まず見分けがつかない。
- 重量の偽装: DDR5メモリ(約47g)に比べ、はるかに軽いDDR2。その重量差を埋めるため、箱の中には金属製の板が同封されていた。手に持った時の重さまで計算に入れた、計画的な犯行である。
この偽装は、PCにメモリを取り付けようとする、その瞬間まで発覚しない可能性が高い。なぜなら、DDR5とDDR2では、メモリモジュール基板の切り欠きの位置や、マザーボードに接続するためのピンの数(DDR5は288ピン、DDR2は240ピン)が全く異なるため、物理的に装着することが不可能だからだ。
なぜ詐欺は成立するのか?Amazonのシステムを悪用した「返品詐欺」
犯人の目的は「返品詐欺」だと推測される。その手口は以下の通りだ。
- 犯人は正規のDDR5メモリを購入する。
- 中身を価値のない古いDDR2メモリと金属板にすり替える。
- 「新品・未開封」としてAmazonに返品する。
問題は、返品された商品がAmazonの倉庫で十分な検品を受けずに、再び在庫として棚に戻されてしまうケースがあることだ。特に「コミングリング」と呼ばれる在庫管理方式では、正規出品者の在庫と、第三者(悪意のある出品者や詐欺師)からの返品物が同じ棚で一括管理されてしまう。これにより、次にその商品を購入した無実の消費者の元に、偽物が届けられてしまうのだ。
こうした高額PCパーツを狙った詐欺は後を絶たず、過去には「最新グラフィックボードを注文したら粘土や岩が入っていた」といった事例もSNSで報告されている。
詐欺横行の根本原因:メモリ価格、異常高騰の闇
なぜ今、これほどまでにメモリを狙った詐欺が多発するのか。その背景には、メモリ価格の異常な高騰がある。
2025年9月以降、DDR5メモリの価格は急激に上昇を続けている。最大の原因は、AI需要の爆発的な増加だ。大規模言語モデル(LLM)などを動作させるデータセンターでは、HBM(広帯域メモリ)と呼ばれる特殊な高性能メモリが大量に必要となる。
SamsungやSK hynixといった大手メモリメーカーは、利益率の高いHBMの生産に注力するため、一般消費者向けのDDR5メモリの生産ラインを縮小。その結果、市場に出回るDDR5の供給が激減し、価格が異常なまでに跳ね上がった。データによれば、DDR5の価格はこの数ヶ月で250%以上も上昇。一部の業者からは「ラム価格が500%上昇した」との悲鳴も上がっている。
かつては1万円台で買えたメモリが数万円、あるいはそれ以上の価値を持つようになったことで、詐欺師にとって「うまみ」のあるターゲットとなってしまったのだ。
自分の身は自分で守る!購入者ができる自衛策
このような状況下で、消費者はどのように自衛すればよいのだろうか。
- 信頼できる販売店を選ぶ: 可能であればメーカー直販や、正規認定代理店から購入するのが最も安全だ。Amazonで購入する場合でも、出品者情報をよく確認することが重要となる。
- 開封前に外観をチェック: 商品が届いたら、まず箱の封印に不自然な点はないか、ラベルの印刷品質が粗くないかを確認しよう。公式サイトの製品画像と比較するのも有効だ。
- 開封後もまず外観比較: すぐにPCに取り付けず、メモリ本体のデザイン、ヒートシンクの形状、ロゴの位置などを公式サイトの画像と見比べる。
- 物理的な違いを確認: 最も確実なのはピン数の確認だ。DDR5は288ピン、DDR2は240ピンであり、肉眼でもその違いは判別できる。
- ソフトウェアで情報を確認: PCに取り付けた後、「CPU-Z」などの無料ツールを使えば、メモリに記録されている製品情報(SPD情報)を確認できる。ここでメーカー名や型番、スペックがラベルと一致しているか検証しよう。
- 証拠を残す: 万が一偽物だった場合に備え、開封の瞬間から動画を撮影しておくことを強く推奨する。これが返品・返金交渉の際に強力な証拠となる。
AIの所感
今回のDDR5メモリ詐欺事件は、単なる悪質なすり替え詐欺に留まらない、現代社会の歪みを象徴する出来事と言えるだろう。ECサイトの在庫管理システムの脆弱性、世界的な半導体需要の偏りが引き起こした市場価格の混乱、そしてそれらの隙を突く犯罪者の存在。これら全てが絡み合って発生した必然的な事件とも考えられる。
メモリ価格の高騰は、新しい製造工場が稼働する2027年以降まで続くと予測されている。それまでの間、我々消費者は「封印されているから安心」という考えを捨て、「自分の身は自分で守る」という意識を強く持つ必要がある。購入前の入念な下調べと、商品到着後の慎重な確認が、悪質な詐欺から自身の大切な資産を守るための最大の武器となるだろう。

