緑に染まる市場、ゲーミングノートPCから「赤」が消えた日
ゲーミングノートPCを選ぼうとスペック表を眺めると、誰もが奇妙な事実に気づくだろう。搭載されているグラフィックス(GPU)が、ほぼ例外なくNVIDIA社の「GeForce」で占められているのだ。デスクトップ市場では、高性能なGPUとして確固たる地位を築いているはずのAMD「Radeon」は、なぜかノートPCの世界では絶滅危惧種となっている。性能が劣るわけではない。それなのに、なぜ――。この根深い謎の背景には、単純な性能比較では語れない、業界の複雑な事情が渦巻いていた。
最大の壁は「供給力」、作りたくても作れないジレンマ
Radeon搭載ノートPCが市場から姿を消した最大の要因は、AMDの供給能力の問題にある。端的に言えば、大手PCメーカーが要求する膨大な数のGPUチップを、AMDは供給しきれていないのだ。事実、鳴り物入りで登場したデスクトップ向けの最新Radeonですら、発売後長期間にわたって深刻な品薄が続いた。この状況で、桁違いの生産台数が必要となるノートPC市場にまで、安定してチップを供給するのは至難の業と言える。
さらに、ノートPC向けGPUの開発スケジュールの遅れも深刻だ。デスクトップで最新アーキテクチャ「RDNA4」が議論される中、ノートPC向けの同世代GPUはいまだ発表の兆しすらない。「2030年になって、ようやく現行世代のGPUがノートに載るのでは」と揶揄されるほど、開発の遅れは顕著になっている。
「NVIDIAでないと売れない」業界に根付く負のスパイラル
供給や開発の問題だけではない。長年にわたるNVIDIAの市場支配は、業界全体に「NVIDIA優位」の構造を根付かせてしまった。多くのゲームタイトルはGeForceでの動作を前提に最適化されており、たとえスペック上は同等でも、実際のゲームプレイではRadeonが不利になるケースが少なくない。
PCメーカーの視点に立てば、話はさらに単純だ。消費者の間には「ゲーミングPCならNVIDIA」という根強いブランドイメージが存在し、マーケティング的にもGeForce搭載を謳う方が販売しやすい。加えて、供給が不安定で、ソフトウェアの最適化も遅れがちなRadeonを敢えて採用するのは、ビジネス上のリスクでしかない。こうして、メーカーはNVIDIAを選び、消費者はNVIDIA搭載機しか選択肢がなくなり、NVIDIAの支配力がさらに強まる、という負のスパイラルが完成してしまったのだ。
ネットの反応
確かにゲーミングノートPCを探すとほとんどがNVIDIAのGPUばかりでレイディオン搭載モデルはほとんど見かけないですよね。
やっぱりNVIDIAじゃないと売れないと考えるメーカーが多いのでしょうか。消費者もグリーンチームを信頼してる印象があり、メーカー側も冒険しにくい流れができているのかもしれません。
自分は一般ユーザーですが、AMDを好んで使ってきたので、こういう偏った状況は正直もったいないと思います。競争があった方が値段も下がりやすくなるはずなので、レディオン搭載機もっと増えて欲しいですよね。
規模の経済という面ではやはりNVIDIAが圧倒的ですし、初回発注や供給安定も含めてメーカーが彼らを選びがちなのは理解できます。ただそれだけで終わって欲しくないです。
AIの所感
CPU市場において、AMDは劇的な復活を遂げ、Intelと互角以上に渡り合っています。しかし、その成功体験がGPU市場、特に制約の多いノートPC分野では活かせていないのが現状です。この背景には、製造委託先との関係、開発リソースの戦略的な配分、そして一度形成されると覆すのが難しい市場の「慣性」など、複数の要因が複雑に絡み合っています。一社の寡占状態は、技術の停滞や価格の高止まりを招き、最終的には消費者の利益を損なう可能性があります。市場の健全な発展のためには、健全な競争が不可欠です。AMDがこの状況を打破し、ノートPC市場に再び「赤色」の選択肢をもたらすことができるのか。それは、同社の戦略的な決断と、我々消費者が多様な選択肢を求め続ける声にかかっているのかもしれません。

