【悲報】DDR5が1年で5倍、逃げたDDR4も道連れ メモリはもう「部品」じゃなくなった
自作PCの見積もりを取ろうとして、先年に作ったメモに書いた金額が桁違いになっていた――そんな戸惑いは、決して個人の計算ミスではない。PCパーツの価格集計サイト「PC Part Picker」のデータをもとに複数のメディアが報じているところによると、DDR5メモリの平均価格はこの1年でおよそ5倍に跳ね上がった。大容量モデルに至っては過去最安値と比べて10倍という水準も出ている。
「3万円」が「10数万円」に 数字が追いつかない現実
集計では、昨年200ドルを切っていた64GBキットが今は1100ドル台になったとされる。日本の店頭感覚に置き換えれば、昨年は3万円前後で変えた容量が、今は10数万円の棚に並ぶ計算だ。値上がりしているのに売り切れが続くという、通常なら起きにくい状況が生まれている。
構成別に見てもその衝撃は明確だ。入門となる16GB(DDR5-4800)は約90ドルから425ドル付近へ。少し速いDDR5-5600の16GBでも108ドルから572ドルへと、上がった分だけで昨年のキットが5本買える額になる。そして重量級の64GB(DDR5-6000)は222ドルから1272ドルあたりへと跳ね、かつて本体ごと買えた予算がメモリだけで消える逆転現象が起きている。
「逃げ道」のDDR4すら巻き添え
面白いのは、容量が上がるほど倍率が悪化している点だ。安いグレードに落とせば絶対額は下がるが、昨年比では結局4倍前後。つまりグレードを落として節約したつもりでも、昨年の自分には勝てない。セールを待っても、在庫が余っていない商品に値下げはつきものらない。
ではDDR5を諦めて古いDDR4で耐えればよいか。多くの人がそう考え、その結果がすでに出ている。DDR4キットも全体で120%から180%近く上昇しているのだ。逃げ場に人が一斉に殺到した結果、そこも逃げ場ではなくなった。DDR4-3200の16GBですら105ドルから281ドルへ動き、最小構成に近い8GBでさえ63ドルから163ドルと2倍以上になっている。
しかもDDR4の値上がりは自作PCユーザーだけの問題ではない。5年前のノートPCのメモリを1枚増設したい、故障で交換したい――そんな普通の使い方でも昨年の倍以上の出費を強いられる。中古相場も新品に釣られて上がり、会社の事務机や学校の教室でもまとめて数十台買う側ほど痛手は大きい。
「店に並ぶ前に裏口で全部持っていかれる」構図
なぜここまで買えないのか。報じられているところでは、2027年の世界のDRAM生産能力を、大規模なクラウド事業者がほぼ抑えているという。作る前の生産枠を前払いで確保したとも伝えられている(あくまで報道であり、契約書が公開されたわけではない)。つまり店頭に並ぶ前に分配が終わり、市場の外側で勝負がついている構図だ。
PCメーカーやスマホメーカーでさえ、AIデータセンターと比べれば「優先度の低い客」と見なされる。利益率の高い相手へ流れるため、完成品のパソコンも高くなり、標準搭載容量も削られる。サプライチェーンの上流が原因なら、地域差は出ず世界同時に跳ねる。実際、欧州の集計でも平均メモリ価格が2025年9月比で345%上昇。同時期にはHDDとSSDの価格も125%超えで上がっており、もはや1つの部品の話ではなくなっている。
「金と比べられる部品」という異常
DRAMチップは重さあたりで金の半分以上の価値があるとさえ言われる。相場商品となれば、盗難や転売の対象にもなり、扱いが宝石に近づいていく。生産側の決算も象徴的で、Samsung、SK hynix、Micron、そして中国のCXMTという主要4社は1年で売上を2倍から3倍以上に伸ばしている。同じ出来事が、片側には苦しみ、もう片側には祝いになっている。
供給側の見通しも暗い。SK hynixのCEOは「2027年は業界で最悪のメモリ供給の年になる」と警告し、需要が生産能力を上回る状態は2030年まで続くとみる。Micronの会長も、この危機があと10年続く可能性に言及している。
消費者ができる「判断の軸」
記事の筆者は、消費者向け価格が下がるにはAI市場の大幅な収縮――すなわち世界の金融市場が大きく調整する事態――が必要だと見立てる。待てば下がるという経験則は、今は当てはまらない可能性が高い。
選択肢は「高い値段を飲むか、少ない容量で済ませるか」に絞られる。そのうえで、まずはその容量が今日の作業に本当に必要か、手持ちの機械をあと1年動かす方が安く済まないか、そして「後から足す」前提の買い方は今回は危険か、という3つの軸で考えるのが現実的だ。
ネットの反応
去年3万円で買えたメモリが10数万円って、自作の見積もりが全部狂うわ
DDR5を避けてDDR4に逃げたらそっちも上がってて草。逃げ場がない
店に並ぶ前にクラウド事業者に持ってかれるっていう構図、普通に怖いな
メモリが金庫行きって、部品が相場商品化するのマジで異常
後から足すつもりで買うと、足す頃にはもっと高くなってるんだよな
AIの所感
かつて「退屈な部品」だったメモリが、構成を決める最初の主役に昇格したのは皮肉な話だ。価格が需要と供給で決まるというおなじみの図式が、今回は「市場の外側」で決着しているのが本質的な怖さだ。個人がいくら貯金しても順番の問題は解けず、待つという最後の逃げ場すら安全とは限らない。
一方で生産側には増産を済ませばよいという単純な答えもない。工場は決めてから量産まで数年かかり、過去には増産して価格を暴落させた経験もある。利益の大きいAI向けから手を広げる構造は、私たちの棚には簡単に届かない。この「誰も困っていない側」が存在する不均衡こそが、今のメモリ高騰を単なる景気循環以上のものにしている。

