【衝撃】Gitはもう限界…1日3万マージの怪物が生まれ、7人が世界標準を捨てた日
世界標準の開発ツールに限界が来た。Claudeを開発するAnthropicが、自社の巨大なコード管理をGitから完全に切り離し、独自開発したScionというシステムへ移行したことが明らかになった。理由は数字が物語っている。メインのプログラムへ統合される変更件数、いわゆるマージ数が、2026年5月には1日あたり約2500件だったのに、わずか4カ月後の9月には1日3万件を超える規模まで急増した。実に12倍以上のペースで、24時間で割れば平均して昼も夜も1分間に複数回のペースでメインブランチが更新され続けている計算になる。
背景にあるのは自律型AIエージェントの群れだ。社内向けに次世代モデルの初期版やSlack上の自律AIが導入され、Claude Codeの並列実行モードが標準になり、複数のAIエージェントを統括する機能が加わったことで開発のやり方が一転した。ここで注意したいのは、マージ件数は単なる作業途中の保存であるコミット数や提案されただけのプルリクエスト数とは違うということだ。テストと審査を通過して全社で共有するたった1つの本番プログラムに確定で組み込まれた回数が1日3万件なのだ。人間が巨大な機能を3万個書いているわけではなく、エンジニア1人あたりのマージ数が従来の1日約2件から約18件へ増えたことに加え、何百ものAIが機械学習の実験コードや細かい性能最適化、設定変更などを絶え間なく流し込んでいる状態だ。コードを書いてテストする工程がAIで自動化された結果、それを受け止めるインフラ側がパンクしてしまった。工場で商品を作るスピードだけが12倍になってベルトコンベアや倉庫が壊れたようなものだ。
なぜGitが悲鳴を上げたのか、分散型の長所が足かせに
根本原因はGitの設計思想にある。LinuxカーネルとGitの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏が設計した通り、Gitは分散型バージョン管理システムだ。人間はネットワークに接続できないオフライン環境でも自分のパソコンだけで過去の履歴を調べたり変更を記録したりできるように作られ、クローンという操作をすると過去から現在までの全ての変更履歴データを手元に丸ごとコピーして持ってくる。人間が自分のパソコンで長く作業するなら大正解の設計だ。
だが内部のデータ構造を見ると巨大化したときに苦しくなる理由が見える。Gitのコミットは変更した差分だけを記録しているのではなく、その時点の全フォルダ構造の頂点を指し示している。100万個のファイルがある巨大な倉庫でたった1つのファイルを1行直しても、そのファイルから一番上のルートフォルダーまで階層構造のデータを連鎖的に作り直す必要がある。しかも今ソース管理にアクセスしている主役はオフラインの人間ではなく、データセンター内で常時オンラインで動くAIエージェントと自動テストだ。自動テストであるCIだけで1日に約2500万回も最新を取り出すチェックアウトという処理が並列で走っている。常時高速なネットワークにつながり、たった数分だけ動いて消えるAIの作業部屋に対して、毎回重い履歴計算や巨大な展開をさせるのは設計の前提が食い違っていた。人間には最高の長所だった全部手元に持ってきて自分で計算する仕組みが、大量のAIにとっては最大の足かせになった。
600PBの通信と7.1分の待ち、サーバー数百台でも止まらない崩壊
具体的な数字を見るとインフラがいかに極限状態だったかが分かる。Anthropicでは全てのコードを1つの巨大な倉庫で管理するモノレポを採用し、メインブランチの履歴だけで約100GB、最新の作業用ファイルを安くした状態でも25GBを超えていた。もし1日2500万回の自動処理が毎回この25GB超のデータを素朴にダウンロードしたら、1日あたり600ペタバイト以上、正確には625ペタバイトという途方もない通信量が必要になるという試算が出ている。AIエージェントが1つの作業を始めるために25GB超のファイルを解凍してディスクに並べる作業だけで、1回に約7.1分も待たされていたという。
サーバー側も深刻だ。Gitは通信量を減らすためにクライアントが持っていない差分だけを履歴グラフから探し出してパックファイルというデータを作る仕組みだが、1日3万回もメインブランチが更新されると全員が毎回違う最新データを要求するからキャッシュが効かず、サーバーのCPUとメモリーがパックファイルの計算でパンクした。一時は数百ものGitミラーサーバーを並べて負荷を分散したが、ミラーサーバーは1台ごとに全てのコピーを持つから倉庫自体が巨大化すると1台のメモリーやディスクの上限を超えて台数を増やしても解決しなくなった。事前に固めたデータであるシードを配る方法も1日3万マージの速度ではシードを作っている間に何千も先へ進んでしまい、必要なファイルだけ後から取るパーシャルクローンなどの機能もAIが過去の履歴検索コマンドを叩いた瞬間に全体の取得が走ってしまった。既存のGitの枠組みでは限界を迎えたのだ。
独自基盤Scion、常時オンラインと割り切り7人とAIで5カ月
そこで一から設計し直したのが独自ソース管理システムのScionだ。最大の設計原則はクライアントは常時オンラインであると割り切り、クライアントとサーバーの役割を完全に分ける非対称設計にしたことだ。履歴の検索や変更者調べ、差分の計算、さらにはコミットの作成やマージ、リベースといった書き込み処理まで全てサーバー側で直接実行する。全てサーバー上で完結するからそもそもGitにあるようなプッシュという概念自体が存在しない。
サーバーがパンクしない秘密はツリー構造を捨てて採用したチェンジセットと派生データという2層のデータ構造にある。記録単位であるチェンジセットには直前の親と比べて変更されたファイルのパスとクラウドのブロブストレージにあるファイルの中身へのポインタしか記録しない。それにより100GBの倉庫であっても1ファイル変更したときの書き込みコストはその1ファイル分にしか比例せず、面倒な最適化メンテナンスも不要になった。全体ツリーや履歴などの派生データは親の派生データと今回の変更ファイルだけを使ってサーバー側で差分更新していく仕組みで、メタデータは分散データベースに保存され、ブランチの更新も重いロックを使わず一瞬で終わる。4層の通信キャッシュ構造で同じマシン上の全AIやCIでキャッシュを共有し、地域のメモリーキャッシュから高速に流すことで1日2500万回のダウンロードをさばく。
驚くべきは構築体制だ。たった7人とClaudeで5カ月で作り上げたという。人間の役割はNOと言うこと、直列マージの死と多層防御、そしてビッグテックのモノレポ戦略との比較という点も議論を呼んでいる。AIが自分のためのインフラを自分で作るというSFのような話が、現実の開発現場で起き始めている。
ネットの反応
1日3万件って人間じゃ絶対に不可能なスピードだろ
たった4ヶ月で12倍とか異常すぎる
全部手元に持ってくる設計がAIには足かせになるとは皮肉だな
600PBの通信量とか想像もつかない
7人とAIで5ヶ月で基盤を作るとか時代が変わったな
人間の役割はNOと言うことって重い言葉だ
Gitを捨てる決断ができるのがすごい
AI時代の開発はインフラから作り直しになるのか
AIの所感
Gitの限界は技術の敗北ではなく、前提の変化だと感じた。オフラインの人間のための分散設計が、常時オンラインのAIの群れには合わなくなっただけだ。1日3万マージという数字は異常だが、その異常を受け止めるためにサーバー側に全振りする割り切りは見事だと思う。これからはコードを書く速さではなく、書かれたものをどうさばくかが競争力になる。人間は書くより止める役割になるという指摘は、これからのエンジニアの姿を暗示している気がする。

