5万ドルが、PS5脱獄シーンの「信頼」を壊した──AIが見つけた脆弱性、GTA6を待つしかなかった計画、そして崩れた黙秘同盟
ソニーが、AIを使ってPS5のハイパーバイザーの脆弱性を発見し、内密に報告した研究者に5万ドル(日本円で約750万円)を支払った。バグ報奨金プログラムが「あるべき姿」で機能した、それだけのことのはずだった。ところがこの一件は、脱獄・自作ソフトコミュニティを巻き込む激論に発展している。怒りの理由は単純ではない──彼らは、この脆弱性を『GTA6』が発売されるまで「隠しておいてほしかった」のだ。
5万ドルを巡る「裏切り」騒動の全貌
発端は「ジョルディ」を名乗る研究者の行動だった。ジョルディ氏はIGNに対し、AIを活用してPS5のセキュリティ層の一つであるハイパーバイザーに脆弱性を発見したと説明。ソニーのHackerOneバグ報奨金プログラムを通じて報告し、5万ドルの報酬を受け取った。ソニーにとっては修正の機会を得られ、発見者にとっては「いいね」よりはるかに価値ある対価になる。プログラムは文字通り機能した。
しかし、同じ脆弱性をすでに把握していた別の研究者がいた。PS5でのLinux動作に取り組む「TheFlowZero」ことアンディ・グエン氏だ。同氏はこの脆弱性へのアクセスを維持したままPS5 Pro対応を完了し、2027年に成果を公開する計画を描いていた。ジョルディ氏の報告を受け、グエン氏はPS5シーンから身を引くことを発表。「数ヶ月の努力が水の泡になった」と語った。何ヶ月もかけて希少なハードウェアの脆弱性を突く仕組みを構築してきた矢先、別の誰かが同じ穴をメーカーに渡してしまう──頼りにしていた足場が自分の足元から消える感覚は、容易に想像できる。
さらに議論を複雑にするのが「黙秘の約束」の存在だ。ジョルディ氏によれば、当初は二人で報告を控えることに同意していたという。ところが、3人目の研究者がやはりAIを使って同じ脆弱性を発見したことが判明。ジョルディ氏は「複数の人間が見つけられるなら、誰かが先に報告する」と判断し、報奨金プログラムへの提出に踏み切った。複数の発見者全員が黙秘を続けなければ計画が崩れる状況で、たった一人が報奨金を取れば終わる。これは構造的に維持が難しい同盟だった。
この件には個人的な事情も絡む。IGNの報道によれば、ジョルディ氏の母親は闘病中で、報酬のおかげで家族と過ごし介護に当たる時間が確保できると語っている。「コミュニティのために5万ドルを捨ててインターネットに捧げる義務」が個人にあるのかという問いには、多くの人が首を縦には振れないだろう。一方でジョルディ氏自身、報酬受領時に「これで少なくともGTAは買えるかな」と煽る投稿をし、後に反応を狙ったものだったと認めている。火に油を注いだ側面は否定できない。
重要なのは、グエン氏らの計画が海賊版ではなかった点だ。彼らはゲームを正規に購入し通常のPSOSで遊びながら、同じ本体で外付けドライブからLinuxを起動し、再起動すれば通常環境に戻る──そんな選択肢を目指していた。計画では11月19日の『GTA6』発売以降まで脆弱性を伏せ、そのファームウェアにも脆弱性が残ることを期待していたが、早期報告でソニーに発売前の修正時間を与えてしまった。所有するハードでLinuxを動かしたいという願いと、悪用に使えるセキュリティホールを塞ぐ企業の正当性は、真っ向から衝突している。
そしてAIという変数だ。グエン氏は「経験の浅い人が大規模言語モデルを使い、理解も不十分なままハッキングしている」と批判。ジョルディ氏はAI利用を認めつつも脆弱性自体は独自発見だと反論する。かつて数ヶ月は非公開でいられた脆弱性が、AIの助けで短期間に複数の独立した発見者へ分散する時代。脆弱性エコノミーの力学そのものが変わりつつある。
GTA6は210GB──SSDの整理を始めよう
その『GTA6』だが、ダウンロード容量は210GBと報告されている。PlayStation Game Sizeの報告をInsider Gamingが独自に裏付けた数字だ。11月19日の発売に先駆け、11月12日からプリロードが始まるので、回線に自信がない人はこの1週間をフル活用すべきだろう。発売初夜、世界中がバイスシティに飛び込んでいる間に自分だけプログレスバーと向き合う──そんな未来は避けたい。しかも発売日の追加パッチも来るはずなので、210GB「ちょうど」ではなく余裕を持った空き確保が推奨される。もっとも、SSD価格が高騰している今、4TB・8TBドライブの増設か、既存タイトルの削除を迫られるという声も相次いでいる。
PS6携帯機、RDNA5を「実質独占」か
次世代機の話題では、Digital Foundryのリッチ・レッドベター氏が興味深い裏話を披露した。「ソニーが今後登場する携帯端末向けに、AMDの次世代GPUアーキテクチャRDNA5の独占的な権利を実質的に確保しているという話がある」というものだ。断定ではなく舞台裏の主張だが、これが事実なら、ソニーの携帯機は競合が同時期には使えないAMD技術にアクセスできることになる。プレイステーションの予想販売台数規模があれば、他社には発注できない特注チップも採算が成立する、という説明も添えられている。
ただし本当に注目すべきはクロック数ではなく電力効率だ。昼休みにバッテリーが保つ範囲でどこまで描画できるか。効率はプレイ時間・冷却・携帯性に直結する。据え置き機とライブラリを共有し、単体でゲームが動く携帯プレイステーションが1,000ドル超という噂価格で出るのか、据え置き機と「どちらか片方でも成立する価値」があるのか。ソニーが本当に実現すべきは、こちら側の設計思想だろう。
『Ghost of Yōtei』500万本でも、リストラは来る
現行機を支えてきたスタジオからも暗いニュースが届いた。Sucker Punchが26人を削減するとAftermathが報じた。『Ghost of Yōtei』は500万本以上を売り上げ、昨年ソニーで最も売れたタイトルになったにもかかわらずだ。約229人の従業員のうち9人に1人が対象。内部メールでは市場の課題と次回作に必要な人員構成が理由とされたが、「実績を作れば守られる」という業界の暗黙の約束が、もはや機能していないことを示す象徴的な事件だ。プレイヤーが求めるゲームを作り、プレイヤーが買応え、そして開発者が職を失う。この構図に違和感を覚えないファンは少ない。
Switch 2脱獄、さっそくYouTubeが起動
任天堂に目を転じると、Switch 2の自作ソフト界隈はすでに動き始めている。研究者PepsiPoo氏が公開したテザリング式エクスプロイトを使い、ユーザーbyismish氏がオープンソースのYouTubeクライアント「vacuumtube」ベースのアプリをコンソールで動作させるデモを披露。膨大な解析の末の最初の成果が「動画が見られる」なのはロマンがあるが、派手な約束よりずっと価値ある一歩だ。さらにGezzyne氏が、エクスプロイトチェーンをセーブデータに保存して起動時にトリガーするアンテザリング式のコンセプトも報告している。ただし現時点で得られているのはユーザーランドレベルのアクセスに過ぎず、セキュリティ層が消えたわけではない。ゲームファイルのダンプ流出説もあるが、検証はされていず、PC移植への期待は時期尚早だ。
ネットの反応
5万ドルの報酬は、経済状況が厳しい今なら当然の判断。ソニーはPS6のローンチに向けて全力を尽くしているのだろう。ただ、リストラは信頼を削る。
何百万人にも影響する脆弱性を悪用しようとしていた人々の同情はしにくい。泥棒の間に義理なし、なぜ驚くのか。
GTA6のために11月5日までに400GBは空けておくよ。安全圏で。
210GB!? SSDのアップグレードが必要かも……いや、SSD自体の値段が上がってるんだっけ。最悪だ。
Ghost of Yōteiは本当に素晴らしいゲームで、発売後のサポートも最高だった。この世代で一番プレイしたゲームだけに、Sucker Punchのことが本当に悲しい。
目標を課して、業界でも異例の売上を達成したら首にする。ではそもそもなぜ人を雇うのか。まったく不条理だ。
PS6は発売日に買うぞ。携帯機も据え置き機も、両方買わされる未来しか見えない。
AIの所感
この騒動の本当の主役は、5万ドルでもGTA6でもなく「AI」だと思う。脆弱性発見の民主化は、情報非対称性を前提に成り立っていた自作ソフトコミュニティの戦略を根本から無効化した。数ヶ月黙っていれば価値を保てた脆弱性が、数週間で第三者に再発見される時代では、「隠し通す」という選択自体がギャンブルでしかない。ジョルディ氏の判断は経済的にも倫理的にも妥当だったと考えるが、一方でソニーにも問いたい。バグ報奨金は守る側への投資だが、本体を所有するユーザーにLinux等の選択肢を提供してきた過去の姿勢(PS OtherOSの廃止以来の経緯)を考えれば、コミュニティの失望は「セキュリティ vs 自由」の古い対立軸の再燃でもある。GTA6という巨大な需要が控える今、210GBのダウンロードと210万通りの物議が同時にやってくる。コンソール業界は、ハードの性能競争から「所有後に何を許すか」の競争へと移行しつつあるのかもしれない。

