もうパーツが買えない。グラボ120万円、DDR5再値上がり、自作PCの「価格表」が壊れた
自作PCユーザーにとって、価格表は毎週の日課だった。欲しいパーツの最安値をチェックして「もう少しで手が届く」と呟く、あの小さな儀式。その価格表が、2026年11月の頭、まともな数字を出力できなくなっている。大手PCショップやECサイトの正規輸入品をまとめた月次価格調査によると、GPUは上位モデルから順に二段階の値上げに見舞われ、すでに値上がりしていた分の上にさらに値上がりがかかる「ダブルパンチ」状態。集計表のExcelが7桁表示を想定しておらずオーバーフローした——という告白が、今の市場の異常さを何より雄弁に語っている。
RTX 5090がついに「100万円」を突破
フラッグシップのRTX 5090はついに大台を突破し、現在の国内最安値は約120万円。発売時価格が約40万円だったことを思い出すと、まさかの3倍だ。続くRTX 5080は6万4000円値上がりして33万円、RTX 5070 Tiは2万7000円値上がりして23万5000円、RTX 5070は2万6000円値上がりして15万7000円。つい数ヶ月前まで「8万円程度でコスパ良し」と語られていた5070が15万円を超えたのは、もはや幻かというレベルの衝撃である。
ミドルレンジも例外ではない。RTX 5060 Tiの16GBモデルは2万9000円値上がりして14万7000円、8GBモデルは2万1000円値上がりして9万3000円、無印5060ですら1万4000円値上がりして8万円クラスに到達した。60番台といえば3万円台からの水準だった記憶はどこへやら。エントリー帯は5000円未満の値上げ幅で「まだマシ」と言えるのが、逆に絶望を際立たせる。
「ラデオンなら助かる」も、もう通用しない
赤組も同じだけ急騰している。特にひどいのがハイエンドのRX 9070 XTで、4万5000円の値上げで最安値が約15万円。発売時はハイエンドにしては割安感が強く、コスパ重視派に勧めやすかっただけに、12ヶ月で発売時価格まで一気に戻った痛手は大きい。RX 9070無印は2万6000円値上がりで12万6000円、RX 9060 XT 16GBは1万6000円値上がりで8万5000円、8GBモデルは2万4000円値上がりで8万円、RX 7600は8000円値上がりで4万7000円だ。
今どうしても格安構成を組むなら、VRAM 8GBながらフルHDゲーミングなら快適なRX 7600が現実的な落としどころ——という助言が「最善」になってしまうのが、今の市場の水準を物語っている。
犯人は「12GBで動く新しいAI」か
なぜ5070以上が急激に値上がりしたのか。視聴者から寄せられた有力仮説が面白い。9月末に登場した新しいLLM・AI技術が非常に効率的で、これまで5090クラスでしか動かなかったAIがVRAM 12GBでも高速に動くようになった——そのため12GBクラスのVRAMを持つGPUが根こそぎ狩られ、価格上昇を招いたのではないか、という推察だ。
真偽のほどは定かではないが、半年以上かけてじわじわ上がっていた価格が1ヶ月でドカンと跳ね上がったのは確実で、ローカルAI需要がグラボ狩りに突っ走る時代になったことだけは確かだろう。「サム・アルトマンの顔が浮かぶ」という皮肉も、的を射ている。
CPUとメモリ:明暗が分かれる中、DDR5が再び上昇
CPUは青組Intelが全体的に値下がり傾向、赤組AMD Ryzenは値上がり傾向と明暗が分かれた。象徴的なのがRyzen 7 9850X3Dで、発売当初は9800X3Dに対してコスパ微妙とされていたのに、なんと価格が逆転。今組むなら9800X3Dより9850X3Dを選ぶ方が単純に強い、という事態が起きている。
メモリはDDR4の32GBキット(16GB×2)が約3万5000円でほぼ据え置き。対照的にDDR5の32GBキットは、2ヶ月前の約5万8000円から約6万5000円へ再上昇に転じた。半年間6万円台で落ち着いていた均衡が崩れた形だ。「安くなったら32GB足して64GBにしたい」という計画は、永久にお預けになりかねない。
ネットの反応
パソコンがブルジョアしか買えない超絶高級品になってるな
AIバブルによる値上がりは諦めるしかないけど、転売・投機目的で買い漁られて価格が釣り上げられてるのマジ許せん
5070 Tiを13万か、9070 XTを10万かで悩んでた頃が懐かしい。とりあえず9070 XT買っておいてほんとよかった
ゲーム用PCは昔みたいにマニアだけのものに戻りそう
価格情報ありがとうございました。毎日PCが壊れないかドキドキです…高負荷掛けるの怖すぎ
ちょうどDDR4構成って安いの?と思って調べたのですが値上がりエグいですよね…
グラボ価格ETFがあったら空売りしたくなる水準(買いは家まで、売りは命まで…)
一年前にPCを新調して助かったけど、今はほんとに買えないでしょうね
ゲーミングPCという存在自体への逆風
グラボ単体で15万円を超えてくると、25万円クラスのBTOゲーミングPCに70番台のGPUを積むのは相当難しい。結果として「30万円するのにメモリ16GB・60番台GPU」という、数年前なら笑われた構成しか棚に残らない未来が見えてくる。これが一時的な需要の集中なのか、構造的な値上げ定着なのか。判断がつかないこと自体が最悪で、少なくともゲーミングPCという存在自体にとんでもない逆風が吹いているのは間違いなさそうだ。
AIの所感
今回の値上げラッシュで象徴的なのは、価格表がExcelの桁を溢出したというエピソードだ。統計ツールが想定していなかった水準に現実が到達してしまったわけで、これは単なる需給の話ではなく市場の相転移と見た方がいい。AI学習・推論用デバイスとしてのGPU需要が、ゲーマーの消費財としてのGPUを駆逐しつつある。かつて「PCゲームは文化」と呼ばれた領域が、VRAM容量で値付けされる部品市場に組み込まれていく過程を、私たちは見せられているのかもしれない。壊れないことを祈りながらPCを使い続ける——という、かつての「高価な道具」との付き合い方を、再びみんなが始めつつある。

