【悲報】映画カメラ、8万ドルの壁崩壊。ARRIと組んだ「スマホ」が撮ったのは、米国では買えない”映画の色”だった
ロサンゼルスのグリフィス天文台。ハリウッドサインを一望できるこの展望台で、いま一目で「緑色のiPhone 18 Pro Maxに似ている」と見間違える一本のスマートフォンが、プロの映像制作者たちをざわつかせている。荣耀(Honor)の最上位機「Magic 9 Pro Max」だ。ただし、この端末の本当の話題はデザインではない。背面に輝くのは、映画カメラ界の王者——ARRI(阿莱)のロゴである。
8万ドルの映画カメラとの「婚約」
ARRIはドイツが誇る映画カメラメーカーで、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のようなハリウッド大作を含む数々の映画・ドラマで撮影に採用されてきた業界標準の存在だ。同社のデジタル映画カメラ「ALEXA(阿莱克斯A)」シリーズは本体価格が簡単に8万ドル(約1,200万円)を超え、個人が気軽に手にできる機器ではない。かつてライカがパナソニックやシャオミと組んでカメラ技術を提供したように、ARRIもまた低価格帯の製品を自社で作り出す代わりに、Honorとの提携という道を選んだ。
提携は名目だけのステッカー合作ではない。端末本体のカメラリングにも、パッケージ箱にもARRIのブランドが刻まれ、中身はソフトウェアからセンサー設計まで共同開発という本格ぶりだ。
ARRIFLEXに触発されたカメラ部門
カメラ構成は、ARRIの伝説的な映画カメラ「ARRIFLEX」のレイアウトに触発されたというトリプルカメラ。2億画素のメインカメラ(絞りf/1.57)と2億画素のペリスコープ望遠(f/2.6)、それに5,000万画素の超広角という布陣で、メインと望遠の両方が2億画素という点はスマホでも極めて異例だ。処理を担うのはHonor独自の新画像プロセッサ「Honor H1」。暗所での階調や色ノイズ抑制はこのチップの仕事とされ、望遠撮影向けの外部テレコンバーター「G200」「G500」や、機材メーカーSmallRigとの専用撮影キットまで用意されている。
映画の「色」をそのまま内蔵したシネマモード
本機最大の目玉が、ARRIと共同開発したソフトウェアベースの「ARRI Cinema Mode」だ。4K/60pでARRI独自のログ映像「LogC3」を、色域「ARRI Wide Gamut 3」のまま10bitで記録でき、録画コーデックにはAPV 10bit 4:2:2を採用。これはARRIの映画カメラと同一のワークフローに直接合流できる記録形式であり、スマホで撮ったカットを映画の編集工程にそのまま混ぜることが理論上可能になる。
色作りも本家譲りだ。内蔵の「ルック(LOOK)」は14種、さらに本家ARRIが映画向けに提供する「ARRI Look Library」のエッセンスを反映した87種のルック体系を参考に、ノスタルジックなフィルム風から現代的なシネマティックトーンまで一発で乗り換えられる。グリフィス天文台からのテスト撮影では、ハリウッドサインを古いフィルムの質感で捉えた映像や、ARRIカメラで撮った映像と見分けのつきにくいルックが確認されており、ロサンゼルスのARRIスタジオでの比較テストではALEXAで撮った映像との色の近さが評価されたという。方向性を持つマイクアレイによる収録音まで「映画の撮り方」に寄せてある。
化け物級のスペック、そして罠
カメラ以外の中身も旗艦級だ。6.8インチの有機ELディスプレイ、最新世代のSnapdragon 8 Elite Extreme、8,800mAhという大容量バッテリーに100W急速充電、手ブレ補正はCIPA規格8.0相当。価格は中国で6,499人民元(約15万円・約970ドル)から、カラーはシャドウブラック、グラシアシルバー、モスグリーンの3色展開とされる。
ただ、ひとつ大きな落とし穴がある。Honorは米国市場から事実上撤退しており、本機もハリウッドのお膝元である米国や西側主要市場での発売予定がないことだ。映画カメラ並みの色を撮れるその端末が、映画業界の目の前の店頭に並ばない——という構図は、ある意味でこの業界の地政学的な皮肉と言えそうだ。参考までに日本でもHonor製品は一部機種に限られており、本機の日本導入も現時点では発表されていない。
とはいえ、「スマホが映画機材を駆逐する」流れそのものは加速している。野球中継やテレビ収録にiPhone 18 Pro Maxが本格導入される例が定着しつつあるように、スタジオ現場では小型で感度の高いスマホが補助カメラとして使われる傾向が強まっている。ARRIとの提携は、その流れを逆手に取って「映画カメラの入口」をスマホに作り替える試みだ。
ネットの反応
8万ドルのカメラと同じLogC3で撮れるって、もう「画質で負ける」言い訳ができない時代になったな
緑のやつ、遠目だと完全にiPhone 18 Pro Maxに見えるのに近づくとARRIロゴがあるの、ロマンがある
米国で売らないのが悔しい。ハリウッドの現場が欲しがっているのに手に入らないとか、脚本よりストーリーある
2億画素×2は実用どうこうより、望遠で切り出しても潰れない安心感が欲しい勢に刺さりそう
AIの所感
Honor Magic 9 Pro Maxの本質は「スペック競争の終着点」ではなく「業界提携の新しい型」だと思う。カメラの画素数合戦が頭打ちになる中、Honorが選んだのは映画カメラ最大のブランドであるARRIの色科学とワークフローを丸ごと借りることだった。LogC3や10bitという数字は一般ユーザーには縁遠いかもしれないが、「スマホで撮った映像が映画の編集工程にそのまま入る」という発想は、撮影体験の階層そのものを書き換えるポテンシャルを秘めている。一方で、その端末が映画業界の本拠地で手に入らないという現実は、技術の国境が製品の国境に先行している現代を象徴している。次にこの提携が動かすのは、スマホで撮る映画祭の部門ではなく、ARRIの名を冠したスマホで撮られたメジャー作品の方かもしれない。

