【悲報】1年で5.2倍──「待てば安くなる」をメーカー自身が否定した日
PCの自作派やゲーマーの間で、じわじわと現実味を増している悪夢がある。メモリが買えなくなる、という事態だ。DDR5の16GB×2枚組、去年の10月なら1万480円で買えた製品が、今年の10月には5万9980円になっていた。約5.2倍。秋葉原の店舗をまとめた価格情報では、同じく1年でほぼ5倍だ。しかも状況は「高い」だけではない。同じ調査では在庫を置く店そのものが減り、売り切れの札が並ぶ店、在庫一点までの店も出始めている。
「AIバブルが弾ければ元に戻る」。そう信じて購入を先送りしている人は多いが、その期待に冷水を浴びせたのは、ほかならぬメモリ業界そのものだ。メモリモジュール大手のチームグループは11月2日の決算説明会で、今年10月から来年6月までが最も厳しい時期になると明言した。今はまだ高くても買える。しかしこの先は、お金を出しても店に品物がなくなる可能性がある——メーカーが”品切れ”に言及してきたのである。
「需給が釣り合うのは2028年後半」──作る側も売る側も同じ見通し
この悲観はチームグループだけの話ではない。メモリチップ三大メーカーの一角、マイクロンは9月の決算で、2027年と2028年は今年よりもさらに不足が深刻化すると説明した。SKハイニックスのトップも今年7月の報道で、来年は供給面において業界にとって最悪の年になると語っている。チームグループが見込む需給均衡の時期は2028年後半。来年に値下がりの機会は見えない、とはっきり言い切っている。売る会社だけでなく、作る会社までが同じ方向を向いている点が厄介だ。
なぜこんなに長引くのか。最大の理由は、来年製造分の大半がすでに長期契約で消化済みだからだ。チームグループのCEOによれば、生産されたチップの約7割がAIデータセンターや企業サーバーへ流れている。マイクロンは2027年計画分の4分の3超が契約済み、サムスンは約8割との証券会社推計があり、SKハイニックスは約10社と長期契約を結んでいる。個人ユーザーが「来れば安くなる」と待っている間に、大口顧客が来年以降の在庫を先取りし終えている構図だ。
増産が利かないことも大きい。マイクロンは原因としてクリーンルーム不足を挙げており、新工場の稼働は早くて2027年、多くは2028年後半以降になる。さらに今ある工場でも、AI向け高速メモリ「HBM」のウェハー占有割合が大手3社で2025年末の18%から2027年末には30%へ拡大するとの推計がある。HBMは歩留まりが低く、ウェハーの3割を使ってもできる容量は全体の約13%にすぎない。サーバー向けと合わせると、今年作れる容量の51%がHBMとサーバー用で消える計算になり、PCやスマホは残り半分を分け合わされる。
「バブルが弾けば安くなる」は本当か──その先に待つ別の悪夢
待ち伏せ戦略の根拠は「AIバブルの崩壊」だ。AI企業がGPUやサーバーを買えなくなれば、余ったメモリが投げ売りされ、値下がりする可能性はある。実際、海外メディアも「下がるとしたらAIバブルが崩れた時」と指摘する。ただし同じ記事は、反動で半導体製造装置や部品メーカーまで一斉に操業を止め、ひどい不景気に突入する可能性も併記している。メモリが安く手に入る世の中になっても、自分の仕事や収入が揺れていては買う余裕がない——皮肉にも、バブル崩壊を待っているうちに財布の方が先に壊れるシナリオがそこにはある。
扇動を見抜く目──「足りない」と言う側の懐事情
一方で冷静な疑いも必要だ。品不足を訴えるチームグループの売上総利益率は、今年1〜3月の約38%から7〜9月には約49%へ上昇。1株あたり利益は過去最高で、会社財産の約6割が在庫だという。足りないと言いながら、在庫も利益も潤沢なのだ。値上がりで最も得をする立場の発言である以上、その言葉そのままに飛びつくのは危険である。とはいえ、作る側が契約済み比率や新工場の稼働時期といった検証可能な数字を並べている以上、全部が煽りとは言い切れない。両方のレンズを持って見極めたい。
今、自分はどう動くべきか──「値段予想」ではなく「困っているか」で決める
購入判断の正しい入口は、値下期の予想ではなく、今のPCが本当に困っているかの確認だ。まずCtrl+Shift+Escでタスクマネージャーを開き、カクつく瞬間にメモリ使用率が上限近くまで張っているかを見る。面白いのは、海外サイトの今年1月の検証で、18GB近く使うゲームでも16GB搭載機で性能がほとんど変わらなかった例が確認されている点だ。検証対象13本のゲームのうち12本が16GBで問題なく動作し、Steamの推奨が32GBの5本でも4本は16GBで動いた。Steamの10月調査でも搭載メモリは16GBが約41%で最多。困っていないなら、高値で使わない在庫を買う必要はない。
逆に効果が明確なのは、ビデオメモリ8GB級のGPUを使っている層だ。同じ検証では、本体メモリを16GBから32GBへ増やすと格落ち(カクつき)指標が60%以上改善した例がある。ただしここで罠。8GB×2枚をもう1組足す4枚差しは約4万6000円で済むが、4枚構成はCPUが保証する動作速度が下がる。16GB×2組への入れ替え(約7万7000円)とどちらを選ぶかは、実売4万5800円と7万6800円という11月上旬の価格差と相談になる。ノートPCは機種によって増設不可なものもあるため、スロットと対応規格の確認は必須だ。
古い規格のDDR4も無風ではない。DDR4-3200の16GB×2組は、去年10月の1万1480円から今年10月は3万2980円、約2.9倍の高騰だ。大手が新規格へ生産を移した分、DDR4の供給が縮んだ影響である。そして完成PCを買う人が注意したいのは、本体価格そのもの。調査会社ガートナーは今年のPC価格が17%上がり、出荷台数が10.4%減ると予測しており、メモリ減量化で原価を抑えた機種も出ている。同じ価格でも載っているメモリが薄くなっている可能性があり、注文時に変更できる容量アップは割安なケースが目立つ。11月の例では、対象機種の16GB→32GB変更が期間限定9696円だったのに対し、後から単品で入れ替えると7万6800円かかる。
ネットの反応
中古もフリマの出品が減り、さらに中古PCからの取り外しと思われるものが増えている。ついにここまで来たか
去年買ったDDR4でのんびり待ちます。あの時買っておいた自分がちょっと偉い
AIの軍事転用目的で開発が進んでいるなら、当分の間、民間にはほぼ降ってこないよなぁ
SSDも高くて買えないので256GBのまま使ってますね。もう開き直りです
今のDDR4の64GB構成でしのぎます。足りないならLinuxでも使えばまだ戦える
全人類メモリ欲しがり病。自分もそのうちの一人
日本全国&全世界のAM4ユーザーがAM5へ移行するの、2027年でもほぼ不可能やないかい
タイムマシンにもメモリがいるのか。未来も過去もメモリから逃げられない
AIの所感
今回いちばん深刻だと感じたのは、値上げそのものより「品切れの予告」が業界の口から出たことだ。価格高騰は我慢比べで乗り切れるが、在庫が消えれば選択の余地そのものが消える。そして長期契約で先に押さえているのがAI企業とデータセンターである以上、個人ユーザーは常に最優先順位の下位に置かれる。構造的に従属的な立場なのだ。海外でも「バブルの後に下がると思うのは甘い。企業はこの値段で売れると知ってしまった」という指摘が共感を集めている通り、一度上がった価格体系が元に戻った例を、半導体業界はあまり持っていない。5〜6年前、メモリはPC組み立てで最も安い部品だったという回想が懐かしく聞こえる今、消費者にできる最善の防衛策は「必要がなければ絶対に買わない」そして「必要な時は後付け増設を前提にしない」の2つに尽きる。バブルの終焉を祈るより、まず開きっぱなしのブラウザタブを閉じる——地味だが、それがいま最も確実な”増設”なのかもしれない。

