【悲劇の名機】なぜソニーは「影の薄いプレステ」PSXで大失敗したのか? しかし、その「壮大なる失敗」がなければ、PSPもPS3も生まれなかった。
【悲劇の名機】なぜソニーは「影の薄いプレステ」PSXで大失敗したのか? しかし、その「壮大なる失敗」がなければ、PSPもPS3も生まれなかった。
プレイステーションの輝かしい歴史の中で、「最も影が薄い」と揶揄される不運なハードが存在します。その名は「PSX」。2003年、ソニーが満を持して世に送り出したこのマシンは、PS2のゲーム機能とDVDレコーダーを融合させた夢のマルチメディア機となるはずでした。しかし、現実は非情にも商業的な大失敗に終わり、わずか1年あまりで市場から姿を消します。なぜPSXは失敗したのでしょうか?そして、なぜこの「失敗作」が、一部のユーザーからは「名機」として語り継がれているのでしょうか。その矛盾に満ちた物語は、ソニー、ひいては日本の家電史における重要な教訓を私たちに示してくれます。

夢の融合と、中途半端という現実
PSXのコンセプトは、まさに野心的でした。「PS2ができるDVDレコーダー」という謳い文句は、家庭内のエンターテインメントを一台で完結させるソニーのホームネットワーク構想の中心を担うはずでした。しかし、その夢は10万円近い高価格という壁に阻まれます。当時のユーザーからは「ゲームはPS2、録画はスゴ録(ソニー製のDVDレコーダー)でよかった」「価格設定が完全に層を間違えていた」という厳しい声が上がりました。ゲーム機としてもレコーダーとしても、それぞれの専門機には及ばない「中途半端な劣化版」というレッテルを貼られてしまったのです。
失敗の要因:ゲームユーザー軽視と時代の波
PSXの失敗は、複合的な要因によってもたらされました。一つは、このハードがゲーム部門のSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)ではなく、ソニー本体から発売されたことに起因する設計思想のズレです。レコーダーとしての機能が優先された結果、ゲーム機としては致命的ともいえる「コントローラー端子の背面配置」という仕様が採用され、多くのゲームユーザーを失望させました。さらに、発売後すぐに本格化した「地上デジタル放送への移行」という時代の大きな波に乗り遅れたことも決定的でした。アナログチューナーしか搭載していなかったPSXは、レコーダーとしての価値を急速に失い、高価な「文鎮」と化してしまったのです。
失敗から生まれた偉大な遺産「クロスメディアバー」
しかし、この商業的な大失敗の裏で、PSXは後のソニー製品に計り知れないほど大きな遺産を残していました。それが、革新的なユーザーインターフェース「クロスメディアバー(XMB)」です。横軸と縦軸で機能やメディアを直感的に整理し、サクサクと軽快な操作感を実現したXMBは、PSXを愛用したユーザーから「最高の使い勝手」と絶賛されました。このUIは、その後すぐに携帯ゲーム機PSPに採用され、さらに次世代機PS3にも引き継がれ、何千万人ものユーザーに愛されるソニー製品の「顔」となったのです。「クロスメディアバーの功績はでかすぎる」という声に象徴されるように、PSXはUIの歴史において金字塔を打ち立てました。また、一体型ハードの失敗という教訓は、後のPS3とnasneによる録画機能の分離・連携という成功戦略にも繋がっていきます。
ネットの反応
UIが優秀で使い勝手がよかった。45000円で買ったと思う、しかしSONYの壊れやすさはこれも例外ではなかったな
結局ゲームはPS2、録画はスゴ録でよかったんだよ。一体型ってのは聞こえはいいけど高機能機を求める層からしたら中途半端な劣化版でしかなかった。
10万円は高すぎ。当時はまだ地デジ移行前で10万出すならもっと良いDVDレコーダー買えたしPS2も安かった。価格設定が完全に層を間違えてたと思う。
コントローラー端子を背面に持っていくってのはゲーム機として致命的だろう。
発売後すぐに地デジが進んでアナログチューナーしか搭載してなかったPSXが一気に使い物にならなくなったのは悲しい。時代を読めなかったソニーの失策だよな。
クロスメディアバーの功績はでかすぎる。PSPやPS3まで使われたんだからUIを生んだという点では大成功と言っていいだろう。
あのデザインは最高にクールだった。縦置きできるデザインは液晶テレビの普及にも合ってたし、リビングにおいてもスタイリッシュだったから所有欲は満たされた。
AIの所感
PSXの物語は、イノベーションが常に商業的な成功と結びつくわけではないという、テクノロジー業界の普遍的なジレンマを象徴しています。市場に受け入れられず「失敗作」の烙印を押されたとしても、その挑戦の中に含まれる革新的なアイデアや設計思想が、後の大成功の礎となることがあります。PSXは、まさにその典型例と言えるでしょう。その「壮大なる失敗」は、クロスメディアバーという偉大なUIを生み出し、後のPSPやPS3の成功に不可欠な役割を果たしました。この事実は、目先の利益や評価だけにとらわれず、失敗を恐れずに新しいビジョンに挑戦し、その経験から学び、次へと繋げることの重要性を私たちに教えてくれます。PSXは、商業的には「影が薄い」存在だったかもしれませんが、その技術的な遺産は、プレイステーションの歴史に燦然と輝いているのです。