【悲報】自作PCの「値段の得」が消滅、38万円同構成で差額わずか325円──20年自作記者が勧めないワケ
【悲報】自作PCの「値段の得」が消滅、38万円同構成で差額わずか325円──20年自作記者が勧めないワケ
米Engadgetが9月29日、「2026年は完成品PCの方が自作より得かもしれない」という記事を公開した。筆者は自作歴20年以上のベテラン記者だ。彼が「今の状況では自分でも自作を進められない」と断じた衝撃の背景には、AIデータセンター需要による部品高騰がある。では日本でも同じことが起きているのか。価格.comの6月30日価格で、同一構成を部品単位で足し算して検証した結果、驚愕の事実が浮かび上がった。
38万円の買い物で「缶ジュース2本分」しか差がない衝撃の試算
検証構成はRTX 5070 Ti、Ryzen 7 7700、メモリ32GB、SSD 1TB、850W電源。この完成品が38万9800円。同じ部品をバラで買うと38万9475円。差額はわずか325円。38万円の買い物で缶ジュース2本分だ。この構成では日本でも「完成品が安い」とは言えないが、「どちらを選んでも値段で損をすることはなくなった」という事実の方が遥かに重い。
なぜ完成品が安く出せるのか。理由は二つ。一つはメーカーの大量仕入れによる仕入れコスト優位性。もう一つが裏テーマだ——「メーカーはまだ部品値上がり分を完成品価格に十分転嫁していない」。これは一時的な猶予であり、在庫が切れれば完成品も値上がりする。背景にあるのはEngadgetが「2026年の大きなメモリ不足」と呼ぶ事態。AIデータセンターが部品を吸い込み、グラボ基板のメモリまで枯渇させているのだ。
日本の実売価格でレシート1枚ずつ読み解く「メモリ5.9万円」の重み
内訳を見るとグラボRTX 5070 Ti 16GBが20万9800円で全体の54%を占める。CPUクーラー付き3万9800円、マザーB650 1万5980円までで26万5580円。ここで待ち受けるのがメモリDDR5-5600 32GB(16GB×2)5万9800円だ。「数年前と一番変わった部分」と指摘される通り、メモリだけで6万円弱。32GBを64GBにしようものなら数万円上乗せになる。SSD 2万5172円、電源9973円、ケース9970円、Windows 11 Home DSP版1万8980円を足して合計38万9475円。完成品38万9800円とほぼ同額だ。
電源を8024円の安いものに変えれば自作が2300円安くなるが、38万円に対して2300円なら体感では「同じ値段」だ。長年「自作は安く上げる手段」と言われてきたが、その値段の得がこの構成ではほぼ消えている。

値段で決まらないなら「何を買っているのか」──保証・手間・拡張性のリアル
差額が意味を持たないとき、差額が何を買っているかが見えてくる。もう一つの完成品39万9800円(1万円高)はCPUクーラーが水冷で「3年間保証」付き。1万円で3年保証ならむしろ安い。38万円の機械が3年目で止まれば修理代は部品により20万円台。そのリスクヘッジが1万円なら桁が違う。
自作の保証は部品ごとにバラバラ。壊れたときどの部品が悪いか自分で切り分け、予備パーツで差し替え検証しなければならない。画面が映らないだけでグラボ・メモリ・電源・マザーのいずれかを借りて差し替える地獄。「その切り分けにかかる時間も実は値段に入っている。325円という数字にはその手間は一切入っていない」——数字に出ないコストこそが自作の隠れた重荷だ。
完成品なら「届いてすぐ動く」「相性悩み不要」「在庫待ちで止まらない」「Windows入り」という安心を丸ごと買える。在庫待ちは今のような価格変動期に「待ち時間そのものが損」になる。しかし完成品にも弱点がある。部品を全部選べない、後で交換しにくい機種がある(特殊電源形状、専用マザーサイズ、ケース使い回し不可)。3年後にグラボだけ強化したくても電源が変えられなければ打ち止めだ。Engadgetも「買うなら後で入れ替えられる標準部品の機種を選べ」と助言している。
自作が有利になる「唯一の条件」──押入れの中身を数えてから財布を見ろ
自作の強みは「部品を全部自分で選べること」と「手元に使える部品が残っている人は負担が激減すること」。ケース・電源・SSDが手元にあれば、買うのはグラボ・CPU・メモリだけで済む。先ほどの試算でケース9970円、電源9973円、SSD 2万5172円=約4万5000円が浮く。325円の話が一気に4万円台の話に変わる。「同じ日同じ中身で結論は反転する。自作向きかどうかは部品箱の中身で決まる」のだ。
ただし試算の弱点も正直に示されている。自作側は安い部品を選んでいる(電源・ケースは最低限クラス)。完成品の中身銘柄は非公開で良いとも悪いとも分からない。セールや在庫で数千〜数万円動く世界で325円に重きを置けない。「325円は勝ち負けを決める数字ではなく、『2万〜3万の差がある世界か、数百〜数千円の世界か』を見極める数字」だ。今回は後者だった。
「死んだのは自作ではなく値段という決め手」──財布より先に押入れを見ろ
Engadget記事には「2000ドル枠なら自作も十分組める(Ryzen 7 9700X 350ドル未満、Radeon RX 9070 XT 7-800ドル)」という自作推奨パートもある。記事自身が「2000ドル枠自体が妥当なラインだと認めている」のだ。今日の試算も自作側を最低限部品で組んでおり、同品質で揃えれば自作がまだ安いかもしれない。それでも「差が数百円〜数千円、あるいは自作が少し安くても、その程度の差では買い方を決められない」という結論は変わらない。
「値段という決め手がなくなった」ことが今年の変化だ。部品値上がりは単に高くなるだけでなく「自作という選択の意味そのもの」を変える。値段で決まらないなら自分で決めるしかない。そこで確認すべきは3点:「保証の窓口は一つか」「標準的な部品か」「手元に使える部品(ケース・電源・SSD)が残っていないか」。財布より先に押入れを数える。残ってたら自作が有利、何もなかったら完成品でいい。そういう順番だ。
「20年以上組んできた記者が自作を進められないと書いた記事でも、自作構成は載っていた。矛盾ではない。死んだのは自作ではなく『値段という決め手』の方だ」——この言葉に2026年のPC選びの全てが凝縮されている。
ネットの反応
325円差てw 自作の「安く済む」神話が完全に崩壊したな。メモリ6万は草生える
保証1万円で3年て保険として考えたら激安やん。自作でグラボ死んだ時の修理代考えたら完成品一択やわ
「財布より先に押入れ」この言葉胸に刺さるわ。ケース電源SSD余ってるから自作有利やったわ
メーカーが値上がり分転嫁してないってのは怖いな。在庫切れたら完成品も一気に上がるやろ
切り分け地獄の時間コスト入れてないのズルいって指摘はガチ。予備パーツない素人は詰む
RTX 5070 Ti 21万て...グラボだけで完成品の半分超えるとか異常すぎる。AIバブルのツケが回ってきてる
AIの所感
今回の検証が示すのは、PCパーツ市場が「個人の自作コスト」と「メーカーの量産コスト」の逆転点を通過しつつあるという構造変化だ。AIデータセンター需要という外部ショックが、メモリ・グラボ・電源等の基幹部品を一斉に引き上げ、個人のバラ買いコストをメーカーの大量仕入れコストに追いつかせた。325円という数字自体はセールや在庫変動で簡単にひっくり返るが、「どちらを選んでも値段で損しない」という均衡状態そのものが歴史的転換点だ。自作の動機が「安く済ませる」から「選ぶ楽しさ・直せる自由・手持ち資産の活用」へシフトしたことは、PC自作文化が趣味・エンジニアリングの領域へ回帰したことを意味する。同時に完成品メーカーには「標準部品採用・保証窓口一本化・拡張性確保」というユーザー本位の設計が求められる時代になった。Engadget記者が「自作を進めない」と書きながら自作構成を掲載した矛盾は、プロですら「値段で語れなくなった」ことの証左だ。今後PCを買う際、スペック表と価格だけでなく「3年後の修理窓口」「電源交換可否」「手持ちパーツの再利用可否」をチェックリスト化するのが、賢いユーザーの新しい作法になるだろう。