【注意・回避策あり】Firefox、CPUが常に高負荷・ノートPCはバッテリー消費量が2倍以上になり批判を浴びる

【注意・回避策あり】Firefox、CPUが常に高負荷・ノートPCはバッテリー消費量が2倍以上になり批判を浴びる

2025年7月22日にリリースされたFirefox 141は、AI技術を活用した革新的な機能を搭載しました。スマートタブグループと呼ばれるこの機能は、開いているタブを自動的に分類し、グループ名まで提案するという画期的なものでした。しかし、リリースからわずか数週間で深刻な問題が発覚。ユーザーたちはFirefoxを使用中にパソコンのファンが激しく回転し、バッテリーが急速に減っていく現象に直面したのです。調査の結果、原因は「インファレンス」と呼ばれる新しい処理機能でした。この機能がパソコンの処理能力を大量に消費し、システム全体の動作を著しく遅くしていることが判明したのです。

FirefoxのCPU高負荷問題と、それによるノートPCのバッテリー消費増加を示すイメージ

技術的背景:プライバシー優先設計が招いた悲劇

Firefox 141のAI機能は、プライバシー保護を最優先に設計されました。全ての処理を利用者のパソコン内で完結させることで、個人データをインターネット経由で送信しない仕組みとなっています。具体的には、各タブのタイトルや内容を数値データに変換し、関連性の高いタブを自動的に見つけ出す。グループ名の提案にはAI学習モデルを活用しています。これらの処理は全て利用者のパソコン上で実行されるのですが、この設計選択が重大な問題を引き起こしました。

Mozillaは「ONNX」という汎用的な技術形式を採用しましたが、この形式は処理効率が悪いことが判明。より効率的な「GGUF」という形式と比較すると、処理速度とメモリ使用量の両面で大きな差がありました。特に問題となったのは、ONNXがデータ圧縮技術に最適化されていない点です。この技術的な選択ミスが、ユーザーのシステムに過度な負担をかける結果となりました。

性能問題の詳細:ファンが唸り、バッテリーが溶ける

利用者からの報告によると、タスクマネージャーで「インファレンス」という処理が異常な負荷を示していました。一般的な家庭用パソコンで処理能力の60%以上を占有し、本体の温度が著しく上昇。ノートパソコンでは通常の2倍以上の速度でバッテリーが減っていく状況が確認されました。さらに深刻なのは、この処理を強制終了してもFirefoxが動作を停止し、再起動が必要になる点です。複数の利用者が同様の症状を報告しており、特に100以上のタブを開いて作業する人にとって致命的な問題となっています。

興味深いことに、AI機能を使っていなくても裏側で処理が動き続けるケースも報告されています。この処理はFirefoxを起動した瞬間から動き始め、タブの数や内容に関わらず常に一定の処理能力を使い続けるのです。ノートパソコン利用者からは「通常8時間持つバッテリーが3時間程度で切れてしまう」という報告も寄せられています。デスクトップパソコンでも冷却ファンの音が大きくなり、作業環境が悪化するという苦情が相次いでいます。このような状況は単なる不便さを超えて、ハードウェアの寿命にも悪影響を与える可能性があります。

対処方法:AI機能を無効化する

幸いなことに、この問題には複数の回避策が存在します。最も効果的な方法は、詳細設定を使用してAI機能を完全に無効化することです。

  1. Firefoxのアドレスバーに「about:config」と入力し、Enterキーを押します。
  2. 表示される警告メッセージを読み、指示に従って進みます。
  3. 検索欄に「browser.tabs.smart_groups.enable」と入力し、この設定をダブルクリックして「false」に変更します。これによりスマートタブグループ機能が無効になります。
  4. 次に「browser.ml.chat.enable」を検索し、同様に「false」に設定することでAIチャット機能も無効化できます。

これらの設定変更により、インファレンス処理の起動が止まり、処理能力の使用率が正常に戻ります。ただし、Firefoxの更新時にこれらの設定が元に戻る可能性があるため、定期的な確認が必要です。

AIの所感

Firefox 141のCPU高負荷問題は、AI機能をブラウザに組み込む際の課題を浮き彫りにしました。プライバシー保護を優先し、全ての処理をローカルで完結させるという設計思想は素晴らしいものですが、現在の技術レベルでは、それがユーザー体験を著しく損なう結果となる可能性があることを示しています。特に、効率の悪い技術形式の選択や、ユーザーによる制御が不十分であった点は、今後のAI機能統合における重要な教訓となるでしょう。

この問題は、MicrosoftのEdgeやGoogleのChromeなど、同様にAI機能の統合を進めている他社にとっても貴重な教訓となります。AI機能の統合は避けられない流れですが、その実装方法には慎重な検討が必要です。プライバシーと処理速度の両立、効率的な技術形式の選択、そして利用者による制御の重要性など、多くの示唆を含んでいます。Mozillaの今回の経験は、理想と現実のギャップを示す好例となりました。ユーザーの声に耳を傾け、彼らの日常に寄り添い、そして何より技術がもたらす恩恵と負担のバランスを慎重に見極めることこそが、真の技術革新への道であると改めて認識させられます。

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