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【深層】なぜCUDAは10年以上、ArmのWindowsに来なかったのか。RTX Sparkで静かに崩れた壁

【深層】なぜCUDAは10年以上、ArmのWindowsに来なかったのか。RTX Sparkで静かに崩れた壁

2026年9月10日、NVIDIAがCUDA Toolkit 13.4を正式公開した。新機能欄に踊ったのは、GPUが速くなった話でも、新機能が増えた話でもなく、「Windows on Armに対応した」という、CPUの種類についてのたった1行だった。これまでWindowsでCUDAを使うには、CPUがIntelかAMDであることが事実上の必須条件だった。その前提が、10年以上の時を経て、静かに崩れたのだ。

ただし、「今日から手持ちのArmノートでローカルAIが動く」わけではない。そこも含めて、なぜこれほど時間がかかったのか、3つの疑問を順に解きほぐす。

二か国語で書かれた説明書。nvccが切り分けるGPUとCPU

CUDAのプログラムは、1冊の本の中に「GPU向けのページ」と「CPU向けのページ」が同居している。GPU向けはPTXという中間言語(世界共通語)で書かれ、古いGPUでも新しいGPUでも通じる。だが、CPU向けのページは、その土地の言葉(命令セット)でしか書けない。Windows向けには、ずっとx86語(Intel/AMD)だけで刷られてきた。

コンパイラのnvccは、自分でCPU向けの機械語を吐かない。WindowsではMSVC(Microsoft Visual C++)という他社のコンパイラに回している。つまり、NVIDIAが「Arm版を出す」と言った瞬間、MSVCのArm64対応と、Windows SDKのArm64対応、そしてCUDAランタイム自体のArm64ネイティブビルドが、すべて揃っていなければならなかった。どれか一つでも欠ければ、リンクは通らない。

CUDA Toolkit 13.4とRTX Spark、Armとx86のアーキテクチャ比較を示す技術的な図解イメージ

なぜエミュレーションでは通じなかったのか。混ぜられないという掟

「x86エミュレーションで動けばいいじゃないか」という発想は、Arm64のプロセスはArm64のバイナリしか読み込めないという、Windowsの根本的な掟(Arm64ECという特殊な仕組みを除く)によって弾かれた。CUDAはDLLとして配られるため、呼び出すアプリと同じアーキテクチャでビルドされていなければ、読み込みすらできない。x86エミュレーション下のプロセスからArm64ネイティブのCUDA DLLを呼ぶことはできず、逆もまた然り。この「混ぜられない」という壁が、10年間エミュレーションという近道を塞ぎ続けた。

10年以上の鶏と卵を、NVIDIAが自分の機械で破った

なぜ今まで来なかったのか。その答えは単純だ。「NVIDIAのGPUを積んだArmのWindows機が、存在しなかったからだ」。QualcommがWindows on Armの独占的なパートナーだった期間、NVIDIAのGPUを搭載したArm Windows PCは市場になかった。GPUがなければCUDAを最適化する意味も、テストする環境もない。鶏と卵の関係が、10年以上解けなかった。

それを破ったのが、NVIDIA自身の「RTX Spark(開発コードN1X)」だ。20コアのGrace CPU、6144のCUDAコア、24GBから128GBの統合メモリ、NVLink-C2Cで毎秒300GBの帯域を持つ、NVIDIAが自ら設計したArmベースのプラットフォーム。これで初めて、Windows on Arm上でCUDAをネイティブに動かす「実機」が手に入った。10月に出荷予定とされるこのマシンのために、NVIDIAは自らCUDA Toolkit 13.4のArm64 Windows対応を完成させたのだ。

手持ちのSnapdragon X Elite搭載ノートでは、RTX Sparkのドライバがないため動かない。だが、「移し替えの準備までならできる」。クロスコンパイルでArm64向けバイナリを吐き出し、RTX Sparkが届いた瞬間に動く状態にはできる。cuDNN、TensorRT、PyTorchのWindows Arm版がどうなっているかは、現時点では「分からない」と正直に言わざるを得ない。確認できていないからだ。

ネットの反応

私もArmのSurface Laptop 7を買った

JetsonはArm

なんかズレてんなぁ。Armの強みとして紹介してるメモリ幅の優位性は何も特殊な事じゃない。今回はWindows側がIntelligent Carveoutで対応しただけ。なのでx86系のRyzen AI Halo等も同様の事が出来るようになってる

AIの所感

CUDAがArmのWindowsに来た。それは、NVIDIAが自らの手でハードウェアを作り、ソフトウェアの壁を自ら壊したからだ。10年という歳月は、独占契約が解け、Grace CPUが成熟し、WindowsがArm64ECで混在を許容するまでにかかった時間だ。RTX Sparkは、単なる新製品ではない。NVIDIAが「x86の次の時代」を自社で定義しに来た宣言だ。手持ちのArmノートで動かないと嘆く前に、クロスコンパイルの環境を整えろ。次の10年は、Arm版CUDAが主役になる。その夜明けを、我々は静かに見届けた。

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