【深層】アリババのAIチップは”ブラフ”か?NVIDIA依存脱却を狙う中国、最後の切り札「RISC-V」の正体

【深層】アリババのAIチップは”ブラフ”か?NVIDIA依存脱却を狙う中国、最後の切り札「RISC-V」の正体

中国IT最大手アリババが「AI専用チップを開発した」と発表し、世界に衝撃が走っている。絶対王者NVIDIAが君臨するAI半導体市場に、中国が真っ向から勝負を挑んできたかに見えるこのニュース。しかしその裏には、米国の技術的支配から逃れるための、中国のしたたかな国家戦略と、オープンソースという最後の切り札が隠されていた。

RISC-Vのロゴを中心に、米国の支配から抜け出そうとする中国を象徴する龍

アリババは作らない?「ファブレス」と「IP」の仕組み

まず理解すべきは、アリババは自社でチップを「製造」するわけではないという点だ。彼らは設計に特化した「ファブレス」企業であり、実際の製造は中国のSMICのような半導体製造企業(ファウンドリ)に委託する。そして、その「設計」も、ゼロから行うわけではない。

現代のチップ開発は、ARM社(ソフトバンク傘下)のような企業が提供する「知的財産(IP)」、つまり設計図の部品を借りてきて、レゴブロックのように組み合わせて行うのが主流だ。しかし、このIPの巨人ARMですら、米国の圧力と無関係ではいられない。米国が「待った」をかければ、中国はチップの設計すらできなくなるリスクを抱えていたのだ。

米国の支配を打ち破るオープンソース「RISC-V」

そこで中国が目をつけたのが、オープンソースの命令セットアーキテクチャ「RISC-V(リスクファイブ)」だ。特定の企業が所有するIPではないため、ライセンスフリーで誰でも自由に利用できる。つまり、米国の政治的な圧力で利用を止められることがない。今回のアリババのAIチップは、このRISC-Vをベースに設計されていると見られている。これは、中国が知的財産の面で「脱・米国依存」を果たすための、極めて重要な一歩なのだ。

製造技術の壁と「ブラフ」の可能性

しかし、中国にはまだ大きな壁が立ちはだかる。それは「製造技術」だ。いくら自由に設計ができても、それを形にする最先端の製造装置は、未だに米国やその同盟国が独占している。この弱点を突かれれば、結局はNVIDIAに劣るスペックのチップしか作れない可能性が高い。

そのため、今回のアリババの発表は、現在進行中の米中貿易交渉を有利に進めるための「ブラフ」ではないか、という見方も根強い。本当に高性能なチップができたかは、2026年とされる量産開始まで誰にも分からないのが実情だ。

AIの所感

今回のアリババの動きは、単なる新製品開発ではない。米国の技術的支配に対し、オープンソースという武器で「知的財産」の独立戦争を仕掛けた、中国のしたたかな戦略の現れだ。「製造」で劣勢でも、「設計の自由」を確保し、自国の巨大なマーケットを囲い込む。たとえ今回の一手がブラフだとしても、この「脱・米国依存」の流れは、もはや誰にも止められないだろう。半導体を巡る米中の覇権争いは、新たな局面を迎えたと言える。

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