
【対岸の火事、鎮火せず】AMD、ついにNVIDIAの悪夢と合流。世界初、Radeon RX 9070 XTの16ピンコネクタが溶融。
【対岸の火事、鎮火せず】AMD、ついにNVIDIAの悪夢と合流。世界初、Radeon RX 9070 XTの16ピンコネクタが溶融。
PCゲーミングの世界を震撼させた、あの悪夢が再び――。これまでNVIDIAのハイエンドGPU、GeForce RTX40シリーズや50シリーズを焼き尽くしてきた「12VHPWR(16ピン)電源コネクタ溶融問題」。多くのAMDユーザーが「我々には関係ない」と安堵のため息をついていたその矢先、ついにその火の手は”赤い陣営”にも及んだ。2025年8月22日、ASRock製のAMD Radeon RX 9070 XTで、世界初となる16ピンコネクタの溶融事例が報告されたのだ。
これは単なる一ユーザーの不幸な事故ではない。特定のメーカーの問題と見られていたこの欠陥が、業界標準規格そのものに内在する、根深く構造的な”病”であることを証明する、極めて重要な事件である。
事故の全貌:なぜ「安全」だったはずのAMDで悲劇は起きたのか
Redditに投稿された報告によれば、悲劇の経緯はこうだ。ユーザーはASRock RX 9070 XTを、3本の8ピンを1本の16ピンに変換するアダプターを介して、ATX 3.1に非対応の旧式電源ユニットに接続していた。この時点で、リスク要因は複数重なっている。
最初に異変に気づいたのは先月。コネクタのピンが1本、他よりも黒く変色しているのを発見。そして先日、わずか4回目の抜き差しで、コネクタはあっけなく溶け落ちた。幸いにもGPU側の端子は無事で、電力制限をかけることで動作はしているというが、これは薄氷の上の勝利に過ぎない。
この一件は、AMDのGPUが比較的消費電力が低いという”安全神話”がいかに脆いものであったかを物語っている。状況さえ揃えば、誰の身にも起こりうるのだ。
技術の罠:なぜ16ピンコネクタは溶けるのか?
そもそも、なぜこの16ピンコネクタはこれほどまでに問題を多発させるのか。最大600Wという巨大な電力を、従来のコネクタよりも遥かに小さな面積、細いピンで無理やり供給しようとする設計そのものに無理がある。ピン1本あたりの電流密度が異常に高いため、少しでも接触が甘かったり、コネクタの挿し込みが浅かったりすると、接触抵抗が増大。そこで発生した「ジュール熱」が、プラスチック製のハウジングを溶かしてしまうのだ。
AMD自身は、このリスクを予見し、多くの自社モデルで従来の8ピンコネクタの採用を継続するという賢明な判断を下してきた。しかし、より高い性能を求める一部のパートナー企業(ASRockやSapphire)が16ピンの採用に踏み切ったことで、AMDが築いてきた安全な”堤防”は、ついに決壊した。
ネットの反応
ついに来たか…。AMDだから大丈夫だと思ってたのに、結局企画そのものがクソだったってことか。
変換アダプターと古い電源の組み合わせは、もはや時限爆弾だな。メーカーはもっと危険性を周知すべきだろ。
ASRockは挑戦的で好きだけど、これは完全に裏目に出たな。ASUSとかが8ピンにこだわり続けた理由がよくわかった。
電力制限して使ってるとか、ユーザーの対応が冷静ですごい。俺ならパニックになって即返品だわ。
AIの所感
この事件は、PCハードウェアの進化が常に抱える「イノベーションと安全性のジレンマ」を象徴している。より高い性能、より小さなサイズを追求するあまり、物理法則の限界を超え、ユーザーを危険に晒してはいないか。メーカーは、自社の製品だけでなく、それが組み込まれるエコシステム全体の成熟度まで考慮して、技術を選択する責任がある。
幸い、業界も手をこまねいているわけではない。次世代規格PCI 6.0ではスロットからの電力供給が強化され、ASUSはマザーボードから直接給電するBTFシステムを開発するなど、新たな解決策が模索されている。溶けたプラスチックの向こう側に見えるのは、失敗の烙印ではない。それは、より安全で、よりスマートな未来へと向かうための、進化の過程で流された、必然の涙なのだ。我々ユーザーもまた、スペックの数字だけに踊らされることなく、自らの安全を守る知識を身につけることが、これまで以上に求められている。