酒呑ガジェット

〜静かな環境であなたに...こちらは音のでないコンテンツです。〜

【悲報】1.56GBの小さいAIが40億の巨人に勝った衝撃 MiniCPM5-2Bが平均53.9点で覆した常識と5つの敗北

【悲報】1.56GBの小さいAIが40億の巨人に勝った衝撃 MiniCPM5-2Bが平均53.9点で覆した常識と5つの敗北

2026年9月7日、中国OpenBMBが25億1675万6480個のつまみを持つ小型AI「MiniCPM5-2B」をApache 2.0で公開した。ファイルは4ビット版でわずか1.56GB。写真フォルダより軽い1ファイルが、34項目のテストで平均53.9点を叩き出し、1.6倍の大きさがあるQwen3.5-4Bの51.1点を上回った。しかも考える量は3分の1。AIは大きいほど賢いという常識が、真っ二つに割れた。

25億が40億に勝った だが平均点には落とし穴がある

作ったのは清華大学の自然言語処理研究室とModelBest社を母体に2022年に発足したOpenBMB。小さいAIだけを専門にするという狭い道を選び続けた集団だ。今回の25億は今の基準ではかなり小さい部類で、1兆を超える時代にその1/400にも届かない規模となる。しかも毎回25億のつまみが丸ごと全部動く「密なモデル」という素直な作りで、専門家を呼び分けるMoEのような当たり外れが出にくい設計だ。使うメモリも返ってくる速さも毎回同じ幅に収まるという道具としての読みやすさが、手元で動かす場面で効いてくる。

中身は42層、質問を受け取る頭が16本、記憶を持つ頭は2本へ共有化され、文脈は13万1072トークンまで入る。分厚い文庫本1冊分が丸ごと入る長さを、1.56GBの1ファイルで扱うという軽さが特徴だ。軽さの要因は、記憶側という最もメモリを食う場所を16本から2本へ絞った設計にある。

成績は自社発表の34項目で平均53.9点。Qwen3.5-4Bが51.1点、Ultra 4.2 3Bが42.7点、Nemotron 3の4Bが32.6点、Gemma 4のE4Bが31.2点、80億もあるLFM2 5 8Bが28.4点という並びで、大きさと点数は全く比例していない。ただし平均点は得意な項目を多く並べれば勝手に上がる数字でもある。そこで項目を1つずつ開けると、勝ち方がはっきり偏っていることが分かる。

手を動かす仕事では大差で勝ち 知識クイズでは5つとも負けた

バグを直せるかを測るSWE-bench Verifiedでは46.4点で相手の33.6点を13点近く引き離し、競技プログラミングのLiveCodeBench v6では69.1点対56.4点、道具を使って調べ物をさせるTau-Benchに相当する外野テキスト103では88.7点対78.6点、長い文章から必要な一文を探すRulerでは68.1点対43.5点で今回最大の24点差、道具呼び出しのBFCL v4でも66.6点で上回り、数学のAIME 2025でも86.5点対78.8点、銀行窓口の手続きを測る試験では20.8点対6.8点で3倍、実務課題のGAIAに相当するGDPval-AV2では19.6点対11.7点と、手を動かして段取りを踏む仕事で軒並み勝っている。

第三者評価でも裏付けがある。Artificial Analysisの知能指数では4B以下のオープンなモデルの中で堂々の1位で、バージョン4.2で15点、4.3では14点。4.3では47機種中1位で、同階級の中央値6点を倍以上引き離す結果となっている。

一方で負けは1か所に固まる。大学レベルの知識を4択で問うMMLU-Proは70.8点対78.0点、大学院レベルのGPQA-Diamondは70.2点対77.1点、SuperGPQAは40.8点対52.8点、MMLU-Reduxは84.7点対88.7点、人類最後の試験と呼ばれるHLEでも8.9点対9.9点と、物を覚えているかを聞く5項目で5つとも負けている。勝ち負けが種類で綺麗に割れたというのが、このモデルの素顔だ。料理人に例えるなら、レシピ本の数では負け、包丁さばきでは勝ったという構図となる。

1.56GBの小型AI MiniCPM5が大型AIを上回る性能を発揮するイメージと料理人の腕のたとえ

本棚の大きさは腕では埋められない 都合の悪い数字も正直に出す

知識で負ける理由は物理的な上限にある。つまみが25億個なら入る本の数はそこで決まる。本棚が小さければ置ける本の数は工夫では増やせないという入れ物の大きさの話で、ここは常識のままだった。逆に手順は本棚の大きさと切り離して鍛えられる。包丁の入れ方という短い情報を何度も繰り返し身につければ置き場所はいらないため、小さくても腕だけは一流になれる。

ただし手を動かす仕事なら何でも勝つわけではないことも、数字は正直に示す。端末を延々と操作し続けるTerminal-Benchでは8.6点対25.8点で3倍の差で負け、難しい側のSWE-bench Proでも14.4点対28.2点で半分、標準的な数学のMATH500でも94.6点対99.0点と優しい問題ほど取りこぼしがある。得意な形がはっきり決まっている道具として、短い仕事は得意で長い仕事は苦手という癖を理解して使う必要がある。

後半の学習は3段階 16人の師匠が横について手つきを直す

腕だけを鍛えた秘密は後半の学習3段階にある。1段目はじっくり考えるお手本を4000億トークン分読ませる段階で、答えではなく考える途中を読ませた点が肝となる。完成品ではなく作っている最中を見せることで手順を体得させる。2段目は分野ごとに専門の先生AIを別々に育てる段階で、数学、コード、道具使い、文章という具合に分業させ、16体の専門家を揃えた。混ぜると中途半端になるため、数学だけを極めた先生を数学を教えるためだけに育てるという贅沢な分業だ。

3段目が今日一番の工夫である「オンポリシー蒸留」だ。通常の蒸留は先生の完成品を大量に並べて真似させるが、弟子自身の手癖は直らない。名人の完成写真を眺めても包丁は上手くならないのと同じだ。オンポリシー蒸留では先に弟子に作らせ、その場で先生が手つきを直す。直す対象が先生の答えではなく弟子自身の動きになるため、手順だけが移り、知識は移らない。だから手の項目だけ伸び、知識の項目は伸びなかったという結果までが一本の線で繋がる。なおこのチームは学習に使ったデータも元文章の山から教材まで名前付きで公開しており、材料を見せても平気なのは商機が秘密ではないからだとしている。

なぜ考える量が3分の1で済むのか 長考は手順がない時の埋め合わせだった

考える量の少なさも手順が体に入った結果だ。兄弟機の1Bで測られた確かな数字では、テスト1周に使った出力が1260万トークンで、Qwen3 5 2Bの推論する版は3億8900万トークンと約31倍、推論しない版と比べても約8分の1で済んでいる。より軽いMiniCPM4 6の1.3Bは540万でさらに2.3倍少ないという位置づけも示されている。今回の2Bについては媒体AlphaSignalの計算で1課題あたり1万9000トークン、Qwen3 0 2の5万6000と比べて約3分の1という値が示されているが、これは評価機関自身の数字ではなく媒体側の計算という前提は分けておきたい。

なぜ短くて勝てるのかという問いには、素人と名人の違いが答えとなる。素人は鍋の前で次に何をするか迷い、立ち止まる時間が長い。長い思考の中身の多くは迷いそのものだ。手順が体に入った名人は迷わないため独り言が短くなる。考える量が少ないのは短くしようとした結果ではなく、迷わなくなった結果だという整理だ。以前に話題となった「安いAIに長く考えさせると高いAIに追いつく」という話と矛盾するように見えるが、前提が違う。あちらは手順を全く仕込んでいないAIの話で、探すことで当たりを引くしかない状況だった。手順が足りない時の埋め合わせが長考であり、足りているなら長考はただの待ち時間になるという使い分けが結論となる。トークンが少ないことは待ち時間と電池の減りにも直結し、手元の機械ほど効いてくる。

手元で動かす3つの選択肢 日本語は「分からない」として扱う

手元で動かす配布形態は3種類で、4ビット版が1.56GBで標準、8ビット版が2.68GB、16ビット版が5.04GBと圧縮を弱くするほど重くなるが精度は落ちにくい。Ollamaなら一撃で動き、LM Studioやllama.cpp、vLLMでも特別な部品は要らないという素直な作りが、手元の導入障壁を下げている。Mac向けのMLXは1Bでは用意されているが、2Bの有無は現時点では未確認とされる。

対応言語として書かれているのは英語と中国語の2つだけで、日本語のベンチマークは34項目に1つも入っていない。日本語性能は測られていない以上「分からない」として扱い、試すなら英語でまず確かめ、日本語は自分の目で確かめるという姿勢が推奨される。34項目の表自体も公開当日の自社発表で、独立した再現検証はまだ公表されていないという前提も忘れてはならない。

物を知っている相手が欲しいなら素直に大きいAIを、手を動かして欲しいなら小さくても腕のいい方を。1.56GBで棚の奥の古いパソコンがもう一度動き出すなら、試す価値は十分にある。Apache 2.0で商用も改造も自由という条件は、その試しを後押しする。

ネットの反応

1.56GBで53.9はやばい。80億で28点とか見ると大きさ信仰が崩れるな

知識5連敗が潔くて逆に信用できる。勝ち負けが綺麗に割れてるのは作り方が効いてる証拠だろ

オンポリシー蒸留って横について手直しするやつか。そりゃ手順だけ伸びるわな

考える量1/3は待ち時間に直結するから手元だとめちゃありがたい。長考不要ってのが刺さった

日本語非対応をちゃんと言うの偉い。期待してがっかりするより分からないって言ってくれた方がいい

古いMacBook Airで動くなら試すわ。Ollamaで一発は助かる

AIの所感

このモデルが突きつけたのは、知能を一つの物差しで測る時代の終わりだ。平均53.9という数字だけを見れば小さい巨人だが、中身を開けると包丁さばきと本棚の大きさという二つの軸がはっきり分かれる。手順は教え方で伸ばせ、知識は入れ物の大きさで決まるという当たり前を、16人の師匠と横について直す蒸留でここまで純度高く示した例は珍しい。考える量が短いことも、迷いが減った結果だという説明は腹落ちする。手元のパソコンで1.56GBが動くという事実は、クラウドの賢さを借りるか手元の腕を信じるかという選択肢を、初めて現実的なコストで並べてくれた。大きいAIにも残る役目は確かにある。その棲み分けを理解した上で、小さい腕利きを棚から下ろして使ってみたい。

-パソコン